オバマ米大統領は9日の記者会見で、今後数カ月の間にイランとの直接対話の糸口を探ると述べ、「互いに敬意を抱き前進する関係になることは可能だと思う」と語った。イラン革命から30年。革命後の両国の相互不信と対立の歴史を変える意欲を示した発言といえるだろう。
イラン側も関係改善の糸口を探り始めている。アハマディネジャド大統領は「まず米国が根本的に政策を変えるべきだ」と主張するが、同国政府高官は「オバマ政権はブッシュ批判から生まれた。米国から公式なメッセージが届くのを待ちたい」と語る。イランを「悪の枢軸」に位置付けたブッシュ政権から対話可能な相手とみなすオバマ政権への交代は、両国関係の転機になりうる。
対話拒否の姿勢だったブッシュ政権下でも米国は国務省を中心にイランに対するアメとムチを明確にした関与政策へと徐々に軌道を修正していた。オバマ政権はこれを引き継いだうえ対話にアクセントを置く。イラクからの米軍撤収やアフガニスタン情勢打開でも、両国に影響力を持つイランを無視することはできないという現実的判断も働いている。
もちろん相互の不信は根深く、直接対話がすぐ実現するような状況ではない。就任前のインタビューでオバマ大統領は「米国が譲れない一線も明確にする」と語っていた。
最大の焦点であるイランの核開発計画をめぐる対立も、早急な打開は難しい。米情報機関はイランのウラン濃縮が技術的に軍事転用可能な水準になるのは2010年以降との判断を示している。まだ外交の時間が残されているともいえるが、年内に外交協議が進展しなければイスラエルだけでなく米国内でも対イラン強硬論が再び強まる可能性がある。
米国の対話呼びかけを関係修復と国際的な孤立脱却につなげるには、イラン側の信頼醸成の努力が不可欠だ。核開発は軍事目的ではないと主張するなら、抜き打ち査察を可能にする国際原子力機関(IAEA)の追加議定書を批准すべきだ。弾道ミサイルの開発推進も疑念を招くだけだと認識すべきだろう。
国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とドイツは昨年、イランがウラン濃縮活動の拡大を凍結すれば見返りとなる協力の協議に入る妥協案を示した。この6カ国は今月、米国の対話姿勢を歓迎し、IAEAへの完全協力をイランに求める共同声明を発表した。オバマ大統領は行動を変えるシグナルを発するようイランに促している。イランもこれに応えて信頼醸成に踏み出すべきだ。