眼科医不在の町に光 郡山から南会津へ出張診療

「出張診療」に臨む松浦医師。白衣は着けず、患者が話しやすい雰囲気づくりに努める=4日
 眼科医が不在だった福島県南会津町舘岩地区で、眼科診療が昨年12月から月2回のペースで行われ、住民に喜ばれている。地区の保健センターを利用する「出張診療」の形式だ。始めたのは、郡山市の「あおい眼科」院長の松浦恭祐さん(32)。「医師不在という地域医療崩壊の再生モデルにしたい」と張り切っている。

 「白内障ですね。カメラで言うとレンズが汚れている状態です」。4日、松浦医師は女性患者に症状を説明していた。

 松浦医師は札幌市出身。東大を卒業して医師になり、東京や北海道の病院勤務を経て、2006年9月、非常勤の勤務経験があった郡山市で開業した。出張診療を思い立ったのは、07年春に舘岩地区から通院する患者から、地域の眼科医療の実態を聞かされたのがきっかけになった。

 舘岩地区は人口約2100人で、高齢化率も高い過疎地域。眼科診療を受けるには、町内唯一の眼科がある県立南会津病院まで、地区の中心部から車でも1時間ほどかかり、病院でもかなり待たされることを知った。

 もともと地域医療に関心があった。「たどり着けない人がいるならこちらから行けばいい」と考えて町と協議。町も舘岩保健センターの一部を無償提供して協力してくれることになり、自身の休日を月2回減らし「舘岩あおい眼科」を開いた。

 診察を受けた自営業の星広信さん(62)は「近くにあるのが何よりうれしい。ゆっくり診てもらえ、話もよく聞いてもらえる」と感謝している。

 郡山から舘岩地区までは片道約140キロある。松浦医師は、乗用車に診療器具を積み込み、路面状況が悪い冬場は3時間近くかかることもある道のりを自分で運転する。

 患者は一日平均約20人。交通費とスタッフの人件費を賄うぐらいで採算ラインにはまだ届いていない。しかし、医師不足の一つの解消策として診療科目によっては「出張診療」が有効と考える松浦医師は意欲満々だ。

 「医師が移り住んで診療に当たるのは確かに難しいが、通いならば十分に成り立つことを実証したい。ほかの地域や科目にも広がってほしい」
2009年02月11日水曜日

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