寺や神社に伝わる行事には風変わりなものも多い。福山市の備後一宮・吉備津神社の「ほら吹き神事」もその一つである。
鎌倉時代、節分の夜に参拝者が自慢話などで語り明かしたのが始まりだそうだ。今年も「麻生首相から選挙への出馬を打診された」という男性が「定額給付金は一人十二万円、出産は百万円」とぶち上げるなど世相を交えたほらで盛り上がった。
神様公認のうそは楽しく罪がない。厳しい世の中だが、腹を抱えて笑えば元気も出ようというものだ。しかし、社会にはびこる欲の皮の突っ張ったうそとなると始末が悪い。
全国の警察が、今月を「撲滅月間」として取り締まりを強めているのが振り込め詐欺だ。現金自動預払機(ATM)の警戒が強まるや、現金の郵送や持参させるなど手口が多様化している。用意させた現金を家に置かせたまま外に呼び出し、そのすきに空き巣に入る事件も起きている。
警察も「だまされたふり作戦」で犯人をおびき出して逮捕するなど新たな対策に知恵を絞る。犯人の手口を利用した「だまし返し」の効果はなかなかのようだ。
とはいえ、手を替え品を替え忍び寄る振り込め詐欺はしぶとい。人を不幸へ突き落とすうその撲滅へ、個々の備えや当局の対策強化とともに社会の目を一層光らせたい。