会見を終え、頭を下げる神戸製鋼所の犬伏泰夫社長(左)、佐藤広士副社長(左から2人目)=10日午後5時48分、神戸市中央区、西畑志朗撮影
神戸製鋼所(本社・神戸市)は10日、兵庫県と山口県にある3事業所で、地元の県議選や市議選で同社の労働組合が推薦する候補者5人の後援会に計約2700万円の不適切な支出があったと発表した。政党と政治資金団体以外への企業からの寄付を禁じた政治資金規正法に違反する行為だったとして、犬伏(いぬぶし)泰夫社長と水越浩士(こうし)会長が3月末で引責辞任し、後任社長に佐藤広士副社長が昇格する。
犬伏社長が同日、神戸市中央区の本社ビルで記者会見して明らかにした。
同社長によると、3事業所は加古川製鉄所(兵庫県加古川市)、高砂製作所(同県高砂市)、長府製造所(山口県下関市)。02〜07年にあった兵庫県議選や加古川、高砂、下関の3市議選の計8回の選挙で、候補者5人に対して総額約2700万円の違法な寄付行為をした、と説明している。
5人はいずれも現職議員。うち3人は同社の社員で、2人はOBという。労組の推薦を受け、立候補していた。
3事業所は各候補の後援会と相談し、事務所の設置やポスター製作などにかかる費用を負担。さらに、文房具を提供したり、コンピュータープログラマーの人件費を支出したりしていた。少なくとも70年代ごろから同様の行為を続けていたという。
政治資金規正法が00年に改正され、企業や労働組合などからの寄付は政党や政治資金団体に限定された。特定の候補者側への寄付ができなくなったが、犬伏社長は「法改正について現場で議論がなく、漫然と(寄付行為を)続けていた」と説明した。
違法な寄付行為は、昨年11月からの大阪国税局の税務調査で発覚、同社が内部調査をした。犬伏社長は議員名や寄付の時期、費目などは「当局の判断にゆだねる」として公表しなかった。
犬伏社長、水越会長とも「寄付の報告は受けていなかった」としている。それにもかかわらず、辞任する理由として、同社長は「06年に神戸製鉄所などのばい煙データを改ざんする問題が発覚し、コンプライアンス(法令順守)を第一にしてきたが、徹底できなかった。会社として事態を重く受け止めた」と話した。
犬伏社長は04年4月、社長に就任。水越会長は99年4月に社長、04年4月に会長に就いた。