ニコニコ動画は(β)以降、(γ)(RC)(RC2)とバージョンを重ねて、昨年12月を予告していた(SP1)がまだでていないという状況ですが、実は(SP1)どころか、夏頃までには登場予定のさらにその次のバージョンまでに搭載されるニコニコ動画の新機能は、すでに(β)時代に構想があったものがほとんどです。
先月からやっとテストのはじまった生放送は、もともと昨年2月から開発を開始して、同5月にニコニコ動画初の有料サービスとして投入すべく準備したものです。5月のイベントが中止されたために発表はできませんでしたが。
ニコスクリプトも字幕.inと同じことを、よりプラスアルファをつけてできるようにするために、やはり、昨年の2月頃に企画されました。
動画のタグ付け、カテゴリ分け、マイリスト、友達リスト、同期チャットなど、当時、開発をすすめようとしていたニコニコ動画の次期バージョンは、γ+RC+RC2+SP1+アルファぐらいの内容でした。
1年後の現在、この計画がうまくいかなったのは、みなさん御存じの通りです。最初のつまづきはアクセス増のため負荷対策に追われてなにもできなかったことです。そして、SMILEVIDEOを予想よりも早くつくらなければならなかったり、収入をすこしでもつくらないとサービスの継続が難しくなったり、権利侵害対策だとか、突発的な出来事のため、どんどん開発計画はスリップしていき、当初の計画のイメージに近いものになったのは(RC2)からです。
さて、2月の時点でしばらくアクセス対策以外はなにも開発できないからということで、とりあえず目先どうやるという話になったときに、ひろゆきが主張したのは公式動画をたくさんつくろうということでした。
Youtubeがもっていない独占動画を集めることで差別化しようということです。
幸いドワンゴはもともと携帯コンテンツの配信でいろいろな権利者と付き合いがありました。非公式に、さまざまな会社にニコニコ動画の説明にいくローラー作戦を開始します。
現場としては非常に理解を示してくれることが多かったですが、やはり正式に会社としてニコニコ動画を認めるということになると難色を示すところが大部分でした。
ニコニコ動画が最終的に成功するためには、権利者に認められることは必須です。なにかニコニコ動画を通じて、実際にビジネスの成功例をいくつもつくることが重要だと考えて、まず、当時、人気のあった陰陽師の動画のCD化の計画がスタートします。
そしてCDといったすでにあるビジネスに置き換えるだけではなく、ネット上での動画配信だけでも課金できることを証明しようという目標もたてました。
ですが、基本無料のニコニコ動画で動画ごとの有料課金を成立させるのは非常に難しい課題です。
よほどのキラーコンテンツでなければ意味のある結果を出すのは難しいでしょう。
われわれはネットでの有料課金が成功するとしたら、一番可能性が高いのはライブ配信だろうと考えました。
そのなかでもニコニコライブで最強の有料化可能なコンテンツは、総合格闘技PRIDEの生中継だろうと考えたのです。
2007年2月、PRIDEを主宰するドリームステージエンターテイメント社との話し合いの結果、3か月後の5月の大会から3大会連続、ニコニコ動画がPRIDEの試合をネット独占配信することが決まったのです。
さっそく生放送バージョンのニコニコ動画の開発チームが別途編成されました。
ところでここで本当の公式動画第一弾のことを紹介したいと思います。昨年末の年越しのニコ割によるニコニコ動画のエンディングで、公式動画第一弾として紹介されたレッツゴー陰陽師ですが、じつは本当の第一弾はβ終了直前に配信した西口プロレスの試合映像でした。公式動画をたまにはフォト蔵にアップロードしてみようと試みたところ、トラブルで音と映像の同期があわず、再エンコードしようとしているうちにニコニコ動画が終了してしまったのです。
DdoS攻撃と(β)終了の騒ぎのなかで、数日だけ公開されたままニコニコ動画の歴史の影にうもれてしまった出来事です。
さて、そろそろニコニコ動画(β)の昔話も終盤のクライマックスにさしかかってきます。
いつものようにニコニコ動画のユーザの反応を2ちゃんねるやブログでチェックしていたところ、不穏な事件が起こっていることを発見したことから事件ははじまります。
どうやら、ニコニコ動画のせいで米国youtubeのランキングに異変がおこり、騒ぎになっているようなのです。
常識的に考えて、youtubeはニコニコ動画という存在に気づいたか、遠からず気づくに違いありません。
われわれの緊張感は高まりました。
(つづく)
◆続・昔話バックナンバー
第1話「2ちゃんねる求人」
第2話「ドワンゴと西村博之氏」
第3話「ネットサービスのエンタメコンテンツ化」
第4話「開始と2ちゃんねる閉鎖騒動」
第5話「VIPPERの来襲と祭りのはじまり」
第6話「サーバ負荷と実質開発総指揮者の暴走」
第7話「ライバルの登場」