「キャラビジネス進化論!」

キャラビジネス進化論!

2007年2月14日

アニメ輸出市場は浮上するか
〜テレビ東京アニメ事業部長・岩田圭介氏インタビュー(その3)

アニメ・ビジネス・フォーラム2007@NBonline

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――では、海外の状況についてお聞きしたいのですが。

 「NARUTO」「ポケモン」「遊戯王」もそうですけれども、1つのタイトルで言うと、経験上のものですが海外でマーケットが成熟してくるまでに、だいたい4年から5年はかかるんですね。そして、全世界をひと回りするのには、7〜8年。それ以降は、そのパフォーマンスがいつまで続くかという問題になります。

Overseas Sales of TV TOKYO Programs

Overseas Sales of TV TOKYO Programs


――そういう意味では、この3作は今うまく続いていますよね。

 世界市場で見ると、「ポケモン」は落ち着いている感じです。残されたエリアで言うと中国マーケットですね。

 一方、「NARUTO」と「遊戯王」は、視聴ターゲットがかなり近いんですね。現状では、「遊戯王」の人気が一時期ほどではなくなり、そのマーケットを全部「NARUTO」が吸収しています。

 世界のアニメ市場というパイで言うと、パイの大きさはこれまでと全く同じなんです。つまり、その中でパイの切り方は変わっているけど、そのパイがほかに食べられているわけではなく、「ポケモン」「遊戯王」「NARUTO」というパイを、テレビ東京が維持しているという感じです。テレビ東京が食べているパイの量は変わっていないんです。

 今後は、そのマーケットに「BLEACH(ブリーチ)」を投入していきます。これについてはハイターゲット(ハイティーン)向けに北米から展開を始めています。過去の作品では「エヴァンゲリオン」に似た形で、マニア層のところでいいビジネスが展開し始めています。

 北米の場合は、「ポケモン」を除くと、高年齢から下の層に下りてくるという傾向があります。「NARUTO」も現在ではアメリカの子供たちに大人気のキャラクターですけど、以前は、本当にアメリカの“オタク”からスタートしているんです。

 日本では逆ですよね。国内では、子供向けのものがまずあって、ビデオゲームなどで年齢を徐々に高めに設定して、展開していきますからね。

日本市場は全世界の1.5割程度だ

――面白い動きですね。では改めて、海外の各マーケットの動向を地域別に教えてください。

岩田圭介・メディア事業推進本部コンテンツ事業部次長兼アニメ事業部長

岩田圭介・メディア事業推進本部コンテンツ事業局次長アニメ事業担当兼アニメ事業部長

 全世界でのマーケット比率では、日本で1.5割くらい、北米で4割、ヨーロッパで3割、残りがアジアなどですが、ここが1.5割という具合でしょうか。

 まずアメリカですが、放送局ではかつて強かったワーナーやフォックス・キッズが視聴率で苦労する一方、カートゥーンネットワークが伸びてきています。

 うちのコンテンツでいうと、「遊戯王」が大ヒットして、それが今、「NARUTO」に移行しつつあります。そうした中、アニメ本編と商品化ビジネスの連動について見直そうとしている動きも出てきていることが市場の特徴でしょうか。

 この理由は、もともと米国では商品化を狙ってアニメーションや実写の映像を作って放送したとしても、番組の中のCMでは、そのキャラクターを使った商品宣伝はできません。

――日本ではそちらの方が一般的なんですけどね。番組を「玩具のプロモムービー」としてダイレクトに流すことができない。

 ヨーロッパもほとんどの国がそうで、これができるのは先進国だと日本ぐらいしかないんです。だから逆にこの手法については、日本がいわば一番先進的なんですよね。

 とはいえ、アメリカの放送局も番組の提供料に相当するものは求めてくるわけです。ただし、その枠では取れないので、ほかのアニメーション番組の方に出稿させる方法を取っています。

――「Power Ranger」(「スーパー戦隊」シリーズ)も、1995年にそういう条件の中でヒットしたので、日本でニュースになりました。

北米では「玩具の宣伝番組」が厳しくなりつつある

 あのシリーズは(そういうプロモの例として)分かりやすいですよね。日本の場合は、番組と商品の連動は常識として、今の子供たちに届けているんですね。

 だけど、世界レベルで言うと、日本のように30分番組のAパートとBパートの前後に作品に出てくる玩具を、自由にプロモーションできる国はあまり多くないようです。

――米国ではそれが一歩進んで、ついに番組中にもメスが入ってきたわけですか。

 そういう雰囲気が出ています。「番組の中で商品を露出するのは好ましくない」という形でね。

 じゃあ、何が必要とされているかというと、作品そのもののエンターテインメント性や内容の面白さです。そういう部分がしっかりしているものが求められてきています。

 この観点からすれば、例えば「NARUTO」は十分に満たしているわけですからOKです。安心して市場展開できるわけです。

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著者プロフィール

中村 均(なかむら・ひとし)

1991年日経BP社入社。半導体分野の雑誌を担当の後、ベンチャービジネスやコンテンツ・ビジネスに関する調査・研究部門、ブロードバンドビジネスのWebニュース部門、日経キャラクターズ!編集長、東京ゲームショウのプロデューサーなどを担当。コンテンツ分野では『アニメ・ビジネスが変わる』『進化するアニメ・ビジネス』などを執筆(いずれも日経BP社刊)。

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