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連載コラム 鈴木貴博氏コラム「ビジネスを考える目」

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「パート3」という新たな鬼門

 ただし、このセオリーにも問題点が1つある。パート3が新たな“鬼門”になるのである。

 それには2つの違ったパターンの鬼門があって、1つはパート3がパート2を超えることができずにコケてしまい、そこでシリーズが終わってしまうパターン。『ジュラシック・パーク』『ビバリーヒルズ・コップ』などはその典型だ(ただし、ビバリーヒルズ・コップは最近、非常に久しぶりとなる第4作の制作が正式発表されている)。

 もう1つは、「三部作」として作品が完結することで、シリーズが終わってしまうというパターンだ。

 制作者にしても出演者にしても、パート2、パート3と前作の期待を上回っていくことは大変な労力を必要とすることだ。だったら最初からパート3を「完結編」と銘打って、ここにすべてのストーリーの頂点を持ってくるように制作してしまえばいい。エネルギーはそこですべて燃焼させて終わる。『ロード・オブ・ザ・リング』などがその典型例だろう。

 このパターンは、成功するのでそれ自体に問題はないが、ビジネスとしては三部作で“おしまい”である。

 このパート3制作におけるの2つの鬼門が、ひょっとすると21世紀のハリウッド流コンテンツビジネスで今後、課題になるのではないかと僕は思っている。

 さて、最後に個人的な要望を1つ。

 『風の谷のナウシカ』については、パート2、パート3をぜひ大スクリーンで、いつの日か見てみたいと思っている。三部作を構成するための原作は既に若き日の宮崎監督の手によって完成されているのだ。もちろん、宮崎監督自身に続編制作に関心がないことは理解できる。しかし、スタジオ・ジブリの次世代のクリエイターたちにとっては、この原作は財産になるはずだ。

 宮崎監督が次の世代にバトンを渡すのがいつの時期になるか、僕には分からない。だが、その時期が来たらぜひ、次世代クリエイターの手によって、あの幻の企画、映画『風の谷のナウシカ2』を実現させてほしい――1人のファンとしての立場から、僕はそう願っているのである。



百年コンサルティング 代表取締役。
東京大学工学部物理工学科卒。
1986年に世界的な戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに入社。
ハイテク領域の大企業に対するコンサルティングを数多く手がける。
1999年にインターネットベンチャー企業のネットイヤーグループの取締役SIPS事業部長に転身。
2003年に独立し、百年コンサルティングを創業。企業の寿命30年の壁を越えるための成長戦略支援を行っている。
著書は『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(講談社)、『進化する企業のしくみ』(PHP新書、共著)など多数。近著は『がつん!力』(講談社)、『カーライル』(ダイヤモンド社)。



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