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連載コラム 鈴木貴博氏コラム「ビジネスを考える目」

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“パート2強化”の流れはテレビドラマにも

 『エイリアン2』自体、映画の企画段階ではいくつかのストーリー展開の候補があったという。

 第一作の最後で主人公と一緒に生き残った猫に実はエイリアンが寄生していたという案、主人公が地球に帰還したところ船内にエイリアンが残っていたため地球がパニックになるという案などもあったそうだ。

 ただ、最初の案では第一作に続くさらなる恐怖を描くにすぎず、2つ目の案でも、場所の設定を変えて恐怖が再現されるにすぎない。

 そこで、実際に『エイリアン2』を撮ったジェームズ・キャメロン監督は、別の選択を行った。

 『エイリアン2』の原題は『ALIENS(エイリアンズ)』。つまり、エイリアンは1匹ではなく無限にいる。「This time it's war(今度は戦争だ)」というのが『エイリアン2』のうたい文句であった。

 この世界観の“進化”によって、『エイリアン2』は『エイリアン』を超える存在となり、エイリアンシリーズの人気を不動のものとしたのである。

 このジャンプを、大沢在昌氏は「新宿鮫」シリーズに取り入れた。

 第一作が新宿・歌舞伎町を舞台にした犯罪小説であったのに対し、続編にあたる『毒猿―新宿鮫II』(光文社、1991年)では、同じ新宿を舞台にしながら、日本と台湾のマフィアの戦争を描いて成功した。

 大沢氏のような、たぐいまれなる才能の持ち主が、計算の上で世界観を設定する――こうして臨んだ第二作は、ミステリー史上に残る名作として再び成功した。

 実際、宝島社が2008年に発表した過去20年間の「このミステリーがすごい!」のベスト・オブ・ベスト10のランキングに2つの作品が入っている作家は大沢在昌氏だけであり、その二作はというと、『新宿鮫』と『毒猿―新宿鮫II』なのである。

 パート2がパート1を超えれば、ビジネスになる――このセオリーは洋画界ではもはや常識となり、この流れはさらに米国のテレビ業界でも重要になっている。

 いわゆるテレビドラマの「セカンドシーズン」だ。『24』『LOST』『プリズン・ブレイク』『HEROS』など、人気が続くドラマシリーズでは、セカンドシーズンの成功がシリーズを引っ張る重要な役割を果たしている。

 日本でも、『3年B組金八先生』は、このセカンドシーズンが成功してシリーズ化が定着した実例と言えるかもしれない。




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