表紙 特集 事例 インタビュー コラム キーワード
連載コラム 鈴木貴博氏コラム「ビジネスを考える目」

hr

『新宿鮫』と『エイリアン』の共通点

 パート2がパート1を超えるビジネスモデル上のポイントは、パート2の制作にある。

 ハリウッド映画界でパート2に力を入れ始めたのと同じころ、大作映画には桁外れの制作費が掛かるようになってきた。同じ巨額のコストを掛けるのであれば、新作よりもヒット作のパート2の方がリスクは小さい。しかし、これまでのやり方ではパート2は駄作になってしまう。

 そこで1980年代以降に作られた続編では、一作目の登場人物は、よほど資金と俳優のポリシーがボトルネックにならない限り、基本的に同じ俳優に続投させるようになってきた。その上で、脚本にものすごくエネルギーと資金を投入して、第一作を絶対に超えることができるというところまでストーリー作りにこだわるようになった。

 著名な原作のある作品であれば、原作者に依頼して一作目を超える作品を書いてもらう。オリジナルの作品でも、前作の世界観を維持しながら、それを超える設定を作れるシナリオライターに時間とお金を掛けてシナリオを完成させて行く。

 その結果、完成したパート2のシナリオは、1970年代以前の続編とは格段にレベルが違う内容に変わったのである。

 このパート2がパート1以上の満足を観客に与えることができれば、シリーズは固定客をしっかりとつかむことができ、巨大なビジネスへと拡大していく道筋ができる。

 では、このパート2のシナリオは、具体的にどうすればパート1を超えられるのだろうか――?

 この点について、ハードボイルド作家の大沢在昌氏が興味深い考察をしている。

 日本のミステリー小説史上に残る名作『新宿鮫』シリーズで知られる大沢氏は、この作品の登場人物や世界設定の魅力をもってシリーズ化することを当初から意図していた。

 その第一作となる『新宿鮫』(光文社、1990年)は1991年、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞したほか、ミステリー小説ランキング「このミステリーがすごい!」の第一位にも選ばれた。

 この成功に第二作が続き、シリーズ化していくためのポイントは、やはり第二作が第一作をしのぐ評価を得ることにある。

 その第二作を書くにあたって、大沢氏は映画『エイリアン』の第一作から第二作への展開を参考にしたというのである。




hr

前のページへ .2 .3 .4 .5 次のページへ
  このページのTOPへ
hr