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2006年 06月 20日
「読売」04/08/15社説 今年もまた、「終戦の日」を迎えた。 先の大戦で亡くなったすべての戦没者を追悼し、平和への誓いを新たにする日である。 けれども国際法上は、一九四五年八月十五日に戦争が終わったわけではない。サンフランシスコ講和条約の第一条に明記されている通り、日本と連合国との戦争状態が終了した日は、講和条約が発効し、日本が主権を回復した一九五二年四月二十八日である。 この間に、極東国際軍事裁判(東京裁判)で、いわゆるA級戦犯として二十五人が有罪となり、このうち東条英機元首相ら七人が絞首刑を言い渡された。 「この裁判は史上最悪の偽善だった。こんな裁判が行われたので、息子には軍人になることを禁止するだろう」 連合国軍総司令部(GHQ)のウィロビー将軍が、判決の後、帰国のあいさつに訪れたオランダ代表のレーリンク判事に、こう語ったことが知られている。 「文明の裁き」と称された東京裁判の性格を象徴するエピソードである。 一方、国内外四十九の法廷によるいわゆるBC級戦犯裁判では、五千七百人が捕虜虐待や民間人殺戮(さつりく)などの戦争法規違反に問われ、九百二十人が処刑された。 日本軍の戦争行為や捕虜の扱いに蛮行が伴ったのは事実だ。関与した者の責任が、「BC級戦犯」裁判を通して問われたのは、致しかたない。 しかし、実際の「BC級戦犯」裁判は、東京裁判と同様に、首を傾(かし)げたくなる内容も多かった。 元捕虜の証言などを手がかりに犯人捜しが行われたが、身に覚えのない容疑で逮捕され、処刑された「戦犯」も少なからずいた。証拠調べは杜撰(ずさん)で、法廷では本人に陳述の機会すら与えられないケースもあった。 とくに、日本降伏後、インドネシアに再侵略したオランダの軍事裁判が乱暴だった、と言われている。 中国の南京攻略戦で「百人斬(ぎ)り」競争をしたという、現実離れした疑いで死刑に処せられた二人の「BC級戦犯」将校の例もある。遺族が昨年、二人の名誉を回復するための訴訟を東京地裁におこした。審理が現在、進められている。 上官の命令に従って捕虜を処刑した兵士にも、死刑判決が言い渡されることがあった。 他方で、広島、長崎への原爆投下はもとより、日本の市街地に対する米軍の無差別爆撃が問われることはなかった。 逆に、無差別爆撃を実行した米軍機の搭乗員に軍律会議で死刑を宣告した旧日本軍の法務官が、捕虜に対する虐待を理由に裁かれた。日本軍の法手続きの不備も指摘されたが、一面において報復的な裁判であったと言わざるを得ない。 今日、捕虜の扱いをめぐっては、米兵によるイラクのアブグレイブ刑務所での虐待事件が問題となっている。 指やつま先に電線をつないで小箱の上に立たせたり、全裸にして「人間ピラミッド」を作らせるなどの虐待、女性収容者へのレイプなどが明らかになった。死亡例も伝えられている。 ウォルフォウィッツ米国防副長官は、尋問方法の一部が戦争捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約に違反していたことを認めた。 「BC級戦犯」に適用された基準から言えば、この虐待に関係した米兵は、死刑を言い渡されても不思議ではないが、米政府はどうするのか。 最後の「BC級戦犯」十八人が出所したのは、講和条約の発効から六年後の一九五八年五月三十日だった。 靖国神社に「BC級戦犯」が合祀(ごうし)されたのは、翌五九年のことである。七八年には、「A級戦犯」も合祀された。 近年、小泉首相の靖国神社参拝に、中国や韓国が反発を示している。両国は、「A級戦犯」が合祀されていることを理由として挙げている。 「BC級戦犯」合祀に関連しての公式な批判は、今のところない。 しかし、中国などの“圧力”に屈して仮に「A級戦犯」が分祀された場合、今度は「BC級戦犯」の合祀が中国などから次なる外交カードとして持ち出される可能性を懸念する声もある。 死者に対しては平等に弔うのが、日本の伝統的な文化、習慣である。全国戦没者追悼式の対象からも、“戦犯”も排除されてはいない。 東京駅丸の内南口近くに、空に向かって両手を大きく広げたブロンズ像がある。台座に「愛」と刻まれている。 今はほとんど忘れ去られているが、巣鴨遺書編纂(へんさん)会が、戦犯死刑囚の遺稿集として刊行した「世紀の遺書」の収益をもとに、世界平和を祈念して一九五五年に建立したものだ。 「世紀の遺書」は、「A級戦犯」「BC級戦犯」の区別なく、約七百編を収録している。多くの「戦犯」たちは、裁判の不当性を訴えつつ、静かに自らの運命と向きあい、日本の未来に思いを寄せていた。 こうした将兵を含めた三百十万人の戦没者の礎の上に、今日の日本の平和と繁栄が築かれていることを、忘れてはならない。 Tags:東京裁判
by sakura4987 | 2006-06-20 13:28 | ■大東亜戦争・東京裁判関連
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