金融不安で「有事の金」、1000ドルを超え最高値更新も

2009年 02月 10日 14:50 JST
 
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 [ロンドン 6日 ロイター] 世界的な金融不安やインフレ懸念、米ドルの先安観を背景に、金価格が1オンス=1000ドルを超えて上昇し、過去最高値を更新するとの見方が出ている。

 金ETFの買い付け残高が過去最高となったことも、貴金属への投資家の強い関心を映し出している。

 資産運用会社ロンドン&キャピタルのアショク・シャー最高投資責任者(CIO)は「投資家にとって問題の核心は金融不安。IMF(国際通貨基金)が発表した数字を見てみれば、不良債権サイクルはまだ道半ばだ」と述べた。

 IMFは1月、米国のローンおよび証券化資産の公表損失額が、2兆2000億ドルに達するとの見通しを示した。昨年10月時点の予想は1兆4000億ドルだった。

 ほかの先進国でもみられるこうした不良債権は銀行の貸し渋りの要因となり、世界経済のリセッション(景気後退)入りにもつながっている。各国中央銀行は銀行の融資を促進させるために政策金利を引き下げており、各国政府は景気対策などに多額の資金を投入している。

 シャー氏は「政府はシステムに流動性を供給しているが、不胎化しない限り、この先何年にもわたる非常に高いインフレの基盤を作ることになる。これらが金を押し上げている」と指摘。企業や金融・経済に関するさらに悪いニュースが加わってモメンタムが付けば、金価格は簡単に史上最高値を更新するとの見方を示した。

 2008年3月に過去最高値1オンス=1030.80ドルを付けた金スポット価格は足元、1オンス=900ドル前後で推移。1月半ば以降で約10%上昇している。

 <保険としての金>

 潜在的なインフレ圧力はマネーサプライの伸びからもみられる。米国マネーサプライM1は1月、前年比約20%増加した。キャッスルストーン・マネジメントの創設者アンガス・マレー氏は「人々はインフレを相殺するための実物資産を必要としている。投資家は保険として金を投資ポートフォリオに組み込んでいる」と述べた。

 米国投資家による資金の本国還流(リパトリエーション)で対ユーロや対英ポンドで最近に上昇を見せた米ドルだが、ファンドマネジャーらの間では、目先の米ドル安もささやかれている。

 キャッスルストーン・マネジメントのマレー氏は「リパトリエーションが逆流すれば米ドルは弱含む。14─16%だろうか。ドル建て金価格はそれぐらい上昇するだろう」と述べた。

 <リスクはアップサイドに>

 アナリストらも、同様の理由から金価格の予想を上方修正。ただ、金価格は2009年中に頭打ちになるとも予想している。

 UBS(UBSN.VX: 株価, 企業情報, レポート)は2009年の金価格の見通しについて、従来予想の1オンス=平均700ドルから同1000ドルに引き上げた。2010年は同700ドルから同900ドルに上方修正した。UBSは先に出したリポートで「米ドルの堅調さにもかかわらず、金はほとんどの主要通貨で上昇しており、貴金属への強い買い意欲が示されている」としている。

 ユーロ建ての金価格と英ポンド建て金価格はともに、先に過去最高値を更新している。

 ゴールドマン・サックス(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)も、向こう3カ月の金価格の予想を従来の1オンス=700ドルから同1000ドルに上方修正。「金融リスクが高水準にとどまるなら、金価格はさらに長い期間でより高い水準で推移する可能性があり、われわれの予想にはアップサイドのリスクが出てくる」としている。

 
 
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