話題

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

特集ワイド:片付けられない人たち 何を捨てますか!?(3/3ページ)

       ■

 では、片付けが得意な人と苦手な人の脳の働きには何か違いがあるのだろうか。諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授(脳システム論)に脳科学の分野から解説してもらった。

 篠原教授によると片付けに深くかかわるのは、大きく分けて▽前頭葉のワーキングメモリー機能▽頭頂連合野の空間認知や立体視などを可能にする機能--の二つという。ワーキングメモリーは脳のメモ帳のような機能で、手順を記憶したり複数のことを並行して行うために必要だ。

 これらの部位には、一つの行動を持続させるのに必要な注意力を調整する機能もある。これらの機能がきちんと働かないと、片付けの手順を組み立てられない、他のことに気を取られて片付けを持続できない、押し入れの中に立体的に物を積み上げるイメージができない、などの支障が生じるという。けれども自身の苦手な機能を自覚し、たとえば立体視機能に問題があれば小学生程度の立体図形のドリルを集中的にこなすことである程度鍛えられるという。

       ■

 冒頭で登場した夏目さんは片付けられないのは自分の部屋だけで、他の人との共有スペースは片付けている。だから片付けが特別苦手というわけではなさそうだ。夏目さん自身は「仕事中心の生活で、家は寝ることさえできれば良かった。内心『誰にも迷惑を掛けていない』という思いもあった」と分析するが、「片付ける過程でもう一つ大きな理由が見つかった」と話す。

 それは、20年近く前に亡くなった母親とその後亡くなった姉の思い出の品に触れるのが怖かったということだ。片付け中に2人が大切にしたCDやアルバムを見つけるたびに涙で片付けを中断することもしばしば。そうこうしているうちに、思い切って捨てていくと2人の死を受け入れることができたという。要するに、夏目さんにとって、「片付ける」作業とは、愛する2人の死と向き合う行為と同じだったのだろう。

 さて、片付け能力に男女差はあるのだろうか? 辰巳さんは「ほとんどありません。女性の方ができて当たり前と思われがちな日本の社会のあり方を反映しているのではないか」と見る。篠原教授も「脳を機能面で見れば、男性が優れている部分があればその逆もある。女性が片付けられないというのは大うそ」と一笑に付した。

 辰巳さんは話す。

 「結局、『片付ける』ということは『捨てる』作業なんです。大げさに言えば、何を取っておいて、何を捨てるかは、自分自身の生き方を問い直すいい機会なんです」

 「整理」「片付け」をやる気がわいてきましたか?

==============

 ◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を

 t.yukan@mbx.mainichi.co.jp

 ファクス03・3212・0279

1 2 3 次へ ▶

毎日新聞 2009年2月10日 東京夕刊

検索:

話題 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報