片付けのできない女性が増えているのでは--。同僚(男性)が私の机を見ながらつぶやいた。エーッ、冗談でしょう!性の違いなんか関係ないはず。でも、もしかしたらもしかして……。3月の引っ越しシーズンを前に、「片付け」について考えた。【山寺香】
地方都市在住の会社員、夏目さん(仮名)は30代の独身女性。マンションで父親と2人暮らしだ。居間や台所などの共用スペース、オフィスの自分の机はきちんと片付けられるのだが、自分の部屋となると話は別という。8畳と4畳半の自室2部屋は15年近く片付けをしていない。布団や洋服、洗濯物が天井近くまで積まれ、平らなスペースは万年床のみ。周囲の荷物に侵食され足を伸ばして眠れず、夜中に雪崩を起こした荷物に埋まってしまうこともあった。
マーケティングの仕事が忙しく、部屋の汚さを気にすることはなかったが、2年前にふと「汚いな……」と感じて整理を始めた。10カ月かかった末に、捨てたゴミの総量はなんと45リットル入りのゴミ袋112袋分に達したという。
昔に比べ、今は片付けが苦手な人が増えたのだろうか。00年に執筆した「『捨てる!』技術」がベストセラーとなった消費行動研究家、辰巳渚さんに尋ねると「片付けの能力が昔よりも低下しているわけではありません」ときっぱり。「身の回りにある『物』の量が増え、一人の人が使いこなしたり整理できる限度を超えてしまったのです」と話した。
それだけではないらしい。
「戦後の日本では古い日本家屋に代わって洋風住宅が急増しましたが、日本人の生活文化にとって画一化された洋風住宅は片付けや収納に適しているとは言えません。それに、核家族化に伴い家庭内で受け継がれてきた収納などのノウハウが受け継がれなくなったことも要因なんです」
なるほど、応接間でソファではなく、ついついカーペットの上に座り込んでしまいたくなることもある。それも、日本人の生活文化というDNAのせいかもしれない。
毎日新聞 2009年2月10日 東京夕刊