今週のお役立ち情報
堤幸彦版『20世紀少年』に漂うフェイクならではの哀愁と美学
2009年02月10日15時00分 / 提供:日刊サイゾー
総製作費60億円というバジェットの大きさと"ともだち"の正体が原作と異なるらしいという部分が注目され、肝心のテーマにはほとんど言及されていない映画『20世紀少年』三部作。原作の世界観を壊すことなく300人ものキャストを動かし、撮影現場で仮編集を進める手際の良さなど堤幸彦監督の"大人の仕事"ぶりが評価されているが、はたして堤監督は「来た仕事は断らない」という職人的美意識のみで『20世紀少年』の大プロジェクトを引き受けたのだろうか。そのことについて考えてみたい。
堤監督のディレクターとしてのキャリアは、『コラーッ!とんねるず』(日本テレビ系)などのテレビのバラエティー畑から始まった。音楽番組やPVを数多く手掛けることでカメラワークや編集テクニックを磨き、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)といった連続ドラマのヒットで売れっ子ディレクターとなる。予算も時間も限られたテレビという枠の中で、最大限に凝った絵づくりを見せる姿勢に視聴者は好感を覚えた。
テレビにおけるキャリアでの一番の代表作は、何と言ってもオフビートなギャグを散りばめた『トリック』(テレビ朝日系)だろう。売れないマジシャン(仲間由紀恵)と自己チューな物理学者(阿部寛)のコンビが新興宗教の教祖と取り巻きによるインチキ霊感商法を次々と暴いていくミステリーだが、教祖や教団に救いを求めていた信者や病人たちは事件解決後はどのように生きていけばいいのかという苦みがドラマに奥行きを与えていた。また、テレビの第1シリーズではヒロインの父親探しというサイドストーリーも盛り込まれていた。"ともだち"による奇跡の数々やカンナの出生の秘密など、『20世紀少年』は『トリック』と重なる部分が少なくない。
もう1人の「仕事を断らない」美意識の持ち主である三池崇史監督と同様に、遊びが許されるB級作品で魅力を発揮する堤監督が、ハズすことの許されない『20世紀少年』の映画化を引き受けたのは、まだ『トリック』シリーズでは充分に伝え切れなかった想いがあるのでないか。『トリック』では霊感商品を売りつける教祖、『20世紀少年』では"ともだち"という心の拠り所を失った人々がエンドロール後の世界をどのように生きていくのかという命題だ。原作ではあまり触れられなかったこの部分を、『トリック』をSF大河ドラマとしてスケールアップさせた『20世紀少年』の中で堤監督がどれだけ見せてくれるのか期待したい。
堤幸彦版『20世紀少年』で、もう1つ抑えておきたいポイントがある。300人を越えるキャラクターの中で、観客は一体誰に感情移入して観るのかという点だ。リーダー気質ではないのにリーダーにならざるを得なかったヨシツネ、大事件に巻き込まれながらも能天気さで乗り切る女子高生の小泉響子、原作では小学校時代の教師に自分の名前を覚えてもらって泣き出すサダキヨは、主人公のケンヂよりも感情移入しやすいキャラクターだろう。
そして忘れてならないのが、"ともだち"の存在だ。小学校の頃にケンヂたちの遊びの輪に入れなかったばっかりに、大人になってから大掛かりなイタズラを仕掛けてケンヂら昔の同級生たちを呼び戻す。ともだち教団をつくったのも、政治団体「友民党」を結成したのも、すべてケンヂくんと最初から遊び直すため。凄まじい執念である。まるで、初恋の女性が振り向いてくれるのを一途に待ち続ける『華麗なるギャツビー』の主人公のようだ。
ケンヂが"正義のヒーロー"になろうとしたのに対して、"ともだち"はそれを上回る存在、"神"になるために幾つものトリックを仕込む。しかし、所詮はギミックであり、何者にもなれないという哀しみが付きまとう。
そこには堤監督が抱える憂鬱さと同じ匂いを感じる。東映『大帝の剣』(06)『包帯クラブ』(07)『まぼろしの邪馬台国』(08)、松竹『自虐の詩』(07)、ワーナー『銀幕版スシ王子!』(08)、そして東宝『トリック劇場版』『サイレン』(06)......と各映画会社の期待に応えて不眠不休で働けば働くほど、若者向けの娯楽作から大人が泣ける感動作まで次々と撮り上げる器用な人、世渡り上手な業界人というイメージが将棋倒しの駒のように勝手に追い掛けてくる。
つい数年前までは、『ケイゾク/映画』(00)、『恋愛寫眞』(03)といった映画でバラエティー番組のコントさながら観客がひっくり返るようなエンディングをほくそ笑みながら撮っていた堤監督だが、根が真面目な性格ゆえに『20世紀少年』のような超大作では関係者を裏切るような真似はせず、優等生として責務を全うするに違いない。総製作費20億円を使って『ヤッターマン』(3月公開)のような超お気楽映画を作る三池監督がバカをすればするほど映画監督としての名声がさらに高まっていくのとは対照的だ。
第1章公開時の「SPA!」(08年9月2日)をめくり直してみると、原作者・浦沢直樹との対談で、堤監督は「同窓会に行ってね、自分だけあだ名がないんですよ。(中略)たぶん、みんなの中に僕の記憶がないんです」と"ともだち"的な発言をしていたことに気付く。
第2章では「ともだちランド」や「ともだち博物館」を建て、大阪万博そっくりな東京万博を開催する"ともだち"はフェイク王国の王様だ。フェイク王国の中にいれば、いつまでも美化された記憶の中で生きていくことができる。また、1年の大半をハリボテのセットや編集室の中で過ごし、思い出をフィルムの中に焼き付ける作業に没頭する映画監督も"ともだち"と同種の人間に思えてならない。
覆面で隠された"ともだち"の素顔は、実は堤監督自身ではないだろうか。
(長野辰次)
●『20世紀少年〈第2章〉最後の希望』
原作・脚本監修/浦沢直樹 脚本/長崎尚志 渡辺雄介 監督/堤幸彦 出演/豊川悦司、常盤貴子、平愛梨、香川照之、ユースケ・サンタマリア、藤木直人、石塚英彦、宇梶剛士、小日向文世、佐々木蔵之介、黒木瞳、唐沢寿明 配給/東宝 1月31日より全国公開中。www.20thboys.com
(c)1992、2006浦沢直樹 スタジオナッツ/小学館 (c)2009映画「20世紀少年」製作委員会
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堤監督のディレクターとしてのキャリアは、『コラーッ!とんねるず』(日本テレビ系)などのテレビのバラエティー畑から始まった。音楽番組やPVを数多く手掛けることでカメラワークや編集テクニックを磨き、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)といった連続ドラマのヒットで売れっ子ディレクターとなる。予算も時間も限られたテレビという枠の中で、最大限に凝った絵づくりを見せる姿勢に視聴者は好感を覚えた。
テレビにおけるキャリアでの一番の代表作は、何と言ってもオフビートなギャグを散りばめた『トリック』(テレビ朝日系)だろう。売れないマジシャン(仲間由紀恵)と自己チューな物理学者(阿部寛)のコンビが新興宗教の教祖と取り巻きによるインチキ霊感商法を次々と暴いていくミステリーだが、教祖や教団に救いを求めていた信者や病人たちは事件解決後はどのように生きていけばいいのかという苦みがドラマに奥行きを与えていた。また、テレビの第1シリーズではヒロインの父親探しというサイドストーリーも盛り込まれていた。"ともだち"による奇跡の数々やカンナの出生の秘密など、『20世紀少年』は『トリック』と重なる部分が少なくない。
もう1人の「仕事を断らない」美意識の持ち主である三池崇史監督と同様に、遊びが許されるB級作品で魅力を発揮する堤監督が、ハズすことの許されない『20世紀少年』の映画化を引き受けたのは、まだ『トリック』シリーズでは充分に伝え切れなかった想いがあるのでないか。『トリック』では霊感商品を売りつける教祖、『20世紀少年』では"ともだち"という心の拠り所を失った人々がエンドロール後の世界をどのように生きていくのかという命題だ。原作ではあまり触れられなかったこの部分を、『トリック』をSF大河ドラマとしてスケールアップさせた『20世紀少年』の中で堤監督がどれだけ見せてくれるのか期待したい。
堤幸彦版『20世紀少年』で、もう1つ抑えておきたいポイントがある。300人を越えるキャラクターの中で、観客は一体誰に感情移入して観るのかという点だ。リーダー気質ではないのにリーダーにならざるを得なかったヨシツネ、大事件に巻き込まれながらも能天気さで乗り切る女子高生の小泉響子、原作では小学校時代の教師に自分の名前を覚えてもらって泣き出すサダキヨは、主人公のケンヂよりも感情移入しやすいキャラクターだろう。
そして忘れてならないのが、"ともだち"の存在だ。小学校の頃にケンヂたちの遊びの輪に入れなかったばっかりに、大人になってから大掛かりなイタズラを仕掛けてケンヂら昔の同級生たちを呼び戻す。ともだち教団をつくったのも、政治団体「友民党」を結成したのも、すべてケンヂくんと最初から遊び直すため。凄まじい執念である。まるで、初恋の女性が振り向いてくれるのを一途に待ち続ける『華麗なるギャツビー』の主人公のようだ。
ケンヂが"正義のヒーロー"になろうとしたのに対して、"ともだち"はそれを上回る存在、"神"になるために幾つものトリックを仕込む。しかし、所詮はギミックであり、何者にもなれないという哀しみが付きまとう。
そこには堤監督が抱える憂鬱さと同じ匂いを感じる。東映『大帝の剣』(06)『包帯クラブ』(07)『まぼろしの邪馬台国』(08)、松竹『自虐の詩』(07)、ワーナー『銀幕版スシ王子!』(08)、そして東宝『トリック劇場版』『サイレン』(06)......と各映画会社の期待に応えて不眠不休で働けば働くほど、若者向けの娯楽作から大人が泣ける感動作まで次々と撮り上げる器用な人、世渡り上手な業界人というイメージが将棋倒しの駒のように勝手に追い掛けてくる。
つい数年前までは、『ケイゾク/映画』(00)、『恋愛寫眞』(03)といった映画でバラエティー番組のコントさながら観客がひっくり返るようなエンディングをほくそ笑みながら撮っていた堤監督だが、根が真面目な性格ゆえに『20世紀少年』のような超大作では関係者を裏切るような真似はせず、優等生として責務を全うするに違いない。総製作費20億円を使って『ヤッターマン』(3月公開)のような超お気楽映画を作る三池監督がバカをすればするほど映画監督としての名声がさらに高まっていくのとは対照的だ。
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覆面で隠された"ともだち"の素顔は、実は堤監督自身ではないだろうか。
(長野辰次)
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