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更新:2月9日 10:24デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

「放送外収入」が頼みのテレビ局 ローカル局の活路とは

 このところテレビ局の営業部門の人と話す機会がとても多くなっている。各所で伝えられるように、CMのセールスは芳しくない状況が続いている。ところが、異口同音に聞こえてくるのは「市況」のせいだという意見だ。構造的な問題だと捉える向きは多くはない。(江口靖二のテレビの未来)

■合い言葉は「放送外収入」

 最近のテレビ局では「放送外収入」という用語が盛んに言われている。放送外収入とはCM以外の売り上げのことで、ほとんどの局は、会計的に別枠としてカウントしている。具体的には映画を制作したり、様々なスポーツや文化的なイベントを開催したりして得られる収入である。

 テレビ局において、この放送外収入という言葉には、他の業界における類似の名称とはやや異なるニュアンスが含まれていた。テレビ局たるもの視聴率20パーセント、30パーセントを取る番組がいちばん偉く、番組以外の事業は愛でられないといった風潮が少なからずあったからである。それほど番組にかけるウエイトや情熱が高く、実際いい番組をたくさん送り出してきた。

 CMの売り上げが落ち込み、放送以外の収入を拡大する必要に迫られるなかで、こういった風潮も急速に様変わりしつつある。しかし、50年間もクローズドなビジネス環境下で放送事業をし、ほとんど成功体験しかないテレビ局が、放送外に活路を見い出すのはなかなか難儀なことだ。

■多すぎるローカル局

 ローカル局の経営が厳しい状況にあるのは、言われてみれば何となく感覚的に分かるものの、きちんと説明するのは難しいのではないか。これは県域の免許制度による市場のサイズと、そこに存在する放送局の数のバランスが適正ではないからである。そうなったのはローカル局が放送をやりたかったというだけでなく、各系列が全国ネットワークを作るために拡大したり、郵政省時代からの放送行政、電波行政が手を入れたりした結果である。

 地上デジタル放送云々を抜きにしても、そもそも日本にはローカル局が多すぎる。情報格差の是正と正論を言ったところで、ビジネス的に無理なものは元々無理なのだ。

■強みは地域でのブランドパワー

 ローカルにおけるテレビ局のブランド力は視聴率以上にまだまだ強大である。それは地元の有力企業が株主であったり、こうした株主らが行っている別事業との総合力を元々持っていたりするからだ。

 一方の東京キー局は放送エリアも広範囲で、株主構成から見ても、地域との繋がりはローカル局ほど強くない。放送外収入を考える時に、東京キー局とローカル局ではかなり差異が出るだろうと容易に想像できる。

「日テレ7」の通販サイト

 TBSがプラザスタイル(旧ソニープラザ)を買収したり、日本テレビ放送網がセブン&アイ・ホールディングスなどと通販ポータルサイトの運営会社「日テレ7」を設立したりと、テレビ局と流通系との組み手が目立つが、これらをローカル局がそのままコピーしてもうまくはいかないだろう。

 しかし、地域におけるブランドロイヤリティーや総合力では決して劣らない。地域の交通事業者や不動産業、小売り流通といった企業群との総合的な組み方を今一度考えていくことになるだろう。

■放送系列を超えた連携も

 またエリアの異なるローカル局同士で、放送系列をも超えて組んでいこうという動きもあるようだ。単なる番組の共同制作や交換といった「本業」部分だけではない。今後は、観光地つながりとか海産物、農産物つながり、交通機関つながりなど放送外、系列外部分での連携となっていくだろう。

 たとえば北海道の人が沖縄に、沖縄の人が北海道に相互に旅行できるような旅行ツアーを作り、それを視聴者参加型の番組として放送もする。ツアー自体も番組内で視聴者と一緒に企画し、地元の有名タレントや局アナがもちろん同行する。

 番組は録画編集したものだが、ツアー自体は専用のSNSで「電車男」のようにリアルタイムに動向を知ることができるし、状況に応じて行き先が変わるかもしれない。番組で紹介した名産品をウェブで売るといったことも考えられる。

■ローカル局が生き残る時とは

 つながりを具現化するのはウェブや携帯電話だ。ダブルスクリーンの一つをオープン(共有)にして、放送はきっちりエリア内で地域的な独自性を確保する。地域にしっかりと目を向け、どのくらいが適正レベルとなる市場なのかを認識し、従来的な価値観で番組の優劣を競うのではなく、放送以外の部分でエリアを超えた連携を行う。

 そしてもちろん最後はコンテンツであることは言うまでもない。「放送外収入」という言葉が聞かれなくなるときこそが、ローカル局は生き残ると言い切れるころあいなのだと思う。

※このコラムへの読者の皆様のご意見を募集してます。こちらをクリックすると、今回のコラムに関するコメントを受け取るための専用ページが開きます。(NIKKEINET外部にある江口氏個人のブログサイトにリンクしています)

[2009年2月9日]

-筆者紹介-

江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント

略歴

 1986年慶應義塾大学商学部卒、慶應義塾大学新聞研究所修了、日本ケーブルテレビジョン(JCTV)入社。技術局、制作局、マルチメディア室、経営企画室を経て開発営業部長。CS、BS、地上波の番組制作、運用を経験。00年AOLジャパン入社、コンテンツ部プログラミングマネジャー。02年プラットイーズ設立に参画し放送通信領域のコンサルティングに従事。08年独立。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員、シェフィーロ取締役などを兼務。

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