テーマ1:「名探偵ホームズ」
(其の3)
 
 
 
座談会参加者
()内=ホームズ放映当時、あなたは...
大塚 (別作品に参加。ホームズでは少しだけ原画を描く)
友永 (イメージボード&原画)
Tom (原画その他いろいろ)
Michi (原画その他)
田中 (原画)
八崎 (動画)
Kei (動画)
(動画)
アヒルッチ :以下アヒル(一般視聴者)
しょーじ :以下しょ(一般視聴者)
 
〜枚数減らしのノウハウ?〜
   
友永 「モンスターファームを見てウチの奥さんがさ、『「どうしてこんなに丁寧に動かすの?』っていうの。...枚数減らしてるんだけど」
一同笑
大塚 「今はね、ともかく動かさなくても見せられるというノウハウがものすごく日本に流行ったでしょ?だから他の人が見たら『何で動かすの?』って。ITNくんがね、なんかパイロット作るっていうんでね、そのなかに”立ち回り”があんのよ。そのコンテをね、ちょっと僕がガッコ行ったときさ、時間があったもんだから描いてみたんですよ。したらね、『こんなに動かすんですか?』って。 『大丈夫ですよ。コンテにはこうあるけどね、かっこいいところを止めで見せても見れます』っていうんですよ。僕はもうバ〜〜ッと動かしたわけ。したら彼ビックリしちゃってねえ。『クラシックだなあ〜〜』って言うんだよ」
一同笑
田中 「え〜〜〜?...クラシックなのか〜〜」
大塚 「やっぱりあの、ここもそうだし、ジブリなんかでも動かさなきゃならないと思っているとこあるでしょ。その違いだと思うんですよね。でも、絵が上手だったらさっさと原画になる人は多いですからね、外は」
八崎 「そうですね」
しょ 「TVで放映してるのに慣れた後、テレコムのを久々にみたら、やっぱり『ここまで動かさなくても...』って思う人がわりと多いんじゃないかな」
大塚 「多いと思うんですよね」
アヒル 「逆に私なんかはモンスターは制限がかなりあったじゃないですか。『少ね〜』とか思った(笑)。で、バットマンに戻ってやっとなんか...って感じ」
大塚 「なにしろね、このコンテだったらちゃんと..ホント通りだったら動かすんだなあと思うでしょ。よそへ行ったらそうじゃないんだよね。動かさなくても見せられるような描き方するよね」
友永 「またそういうノウハウがあるよね。うちは逆にそういうノウハウが無いから」
Michi 「だってテレコムでそういうノウハウ教えてもらったわけでもないもん。わかんないよ」
アヒル 「逆に自由ですよね」
Tom 「モンスターファーム見てて、なんでこんなにみんな動かすんだろうって思ったよ(笑)」
田中 「私もそう思った(笑)後ろ向いて喋ってんだから手なんて動かさなくていいじゃんって思うんだけど」
アヒル 「でもテレコムの仕事に慣れると、あれでもやっぱりなんか...『えぇっ?!』って感じはしますよ。『こんな少ない?!』って」
田中 「そぅお?」
Michi 「だってねえ、そんな動かすわけないもん、外の原画で」
田中 「社内は“スライド”って書いてるのに作画で動かす人いたからね」
Michi 「だって、動かさなきゃいけないかなっていうそういう強迫観念みたいなのがあるんだから(笑)だからハッキリ指示する演出かそういう人がちゃんと言ってあげないとダメだよ」
大塚 「あれは指示しないとダメだね」
Michi 「うん!そこをなーなーでやってたら絶対その部分は枚数かかるよ」
 
クラシック?でも視聴者を引き込ませる作画テクニックはいつだって大事。
 
〜旅行の思い出〜
   
しょ 「ホームズの頃って社員旅行かなんか..そういうのはなかったんですか?」
友永 「夏に海いったぐらい?」
田中 「伊豆の海に...海水浴に、白浜に何度か」
友永 「あの時はスケジュールバラバラじゃなかったから、結構まとめて休みとってねぇ、どっか行ってたよね」
田中 「大塚さんですよね、浴衣姿で鴨居にぶら下がってたの」
大塚 「そう」
八崎 「ウィスキーの一気やらされて、ピョンってぶら下がったらミシッ...て」
一同笑
田中 「えーと...竜宮荘ですよね、遠藤君に女装させたのは」
友永 「そんなのがあったの?」
田中 「あったあった。化粧して、スカートを持ってピラ〜ンって回ったところの写 真をパシッて撮った」
Tom 「後で本人が写真を見て、『ゲゲッ!気持ち悪い』って。もうちょっとマシかと思ってたみたい」
友永 「へ〜〜」
大塚 「僕が落っこった瞬間の写真っていうのがあるの」
田中 「え?落っこった瞬間??」
大塚 「うん、あのね、丹沢の方に行ったんですよ、○映のいろんな若いの連れて。大きな木があってね、枝がでているんですよ。その枝に腰掛けてね、5人ぐらい。一番端に僕が座ろうとしてね。自動シャッターをつけてパッと走ってひらっと乗ったの。したら真っ逆さまに落ちちゃったの」
一同笑
大塚 「みんなニコニコ笑ってね、僕だけ真っ逆さまに落ちた写 真があるの(笑)」
田中 「それは公開されてませんね。見たことがないから」
大塚 「ないかなあ?」
田中 「何でしたっけ?あの〜伊豆に行ったときに海の上って言うかちょっと汐だまりに橋がかかってて、子供がみんな飛び込んでて、大塚さんも飛び込むと言って、飛び込んでハラ打ちして(笑)顔から腹まで真っ赤っかになってて....」
大塚 「あの時ね、前の日にオートバイで事故やってね、ここ(肘の付近一帯)をすりむいたんです。それで、かさふたの大きいのができたんですよ。で、パーッと飛び込んだらね、かさふたが全部パッと飛んじゃった」
一同笑
大塚 「一緒に全部飛んじゃってさ、そこへチリチリの塩がきて...」
「痛そう〜」
大塚 「僕は結構ね、テレコムでずーっと、なんかあったとき写 真撮ってるでしょ。フィルムすごくあるんですよね。あんたらが若い頃のね」
   
>座談会もそろそろ終盤に。時刻は午後9時近くでした。大塚さんはこのあたりで退席されました。
 
〜大塚さんが帰った後....〜
   
Michi 「でもそれでも一生懸命描いたものには誉めてくれたけどね...大塚さんなんかもよく誉めてくれるんだよね、やっぱりね」
友永 「そうそうそう」
田中 「うまい。誉めるの」
八崎 「対処の仕方がすごい現実的なんですよね」
友永 「うん。さっき大塚さんと話したんだけど、あるものを使って最低限の直しで何とか使えるようにするっていう姿勢が、大塚さんの中で結構あるみたいなんだよね」
Michi 「やっぱ気にいらないと思うよ、自分が描いた原画っていうのはね、わりと...そういうとこ見てくれるんだよね」
Tom 「あるものを生かす、どうやったらそれが使えるようになるかっていうんでタップを切り張りして...それでも現場は使ってもらった方がいいよね」
友永 「なんか、泳いで来るアクションで、切り貼りによって上下の動きをつけただけで、それだけで動きは全然変わってくるんだと。それで原画をそのまま使えるようにしたとかね」
八崎 「すごいですよね。チエの時なんか小鉄とアントニオの決闘のシーンで....アントニオのところだけこういうふうに(キャラのまわりを)切り取って、こういうふうに...(それをすこし傾ける)」
一同笑
八崎 「斜めにして貼り付けて(笑).....へ〜〜〜〜って」
友永 「でも動きの幅を変えることによって、変わって見えるんですよ、同じ絵でも」
田中 「ポイントをつかむのがうまいの」
友永 「うまいですよね。こう直せばこのまま使えるって」
田中 「この間上田さんが、犬が手前に走ってくるカットを描いたんですよ。でも正面 描けないからどうしてもこう、斜めに横むいちゃうのね。大塚さんに『犬の走りです』って見てもらったら、『犬はこうやって(斜めに傾いて)走らせた方が格好が付く』って言って...」
八崎 「あ、なるほどね」
田中 「正面にガーッと走ってくるよりもこうやって...だからこの絵はこのままでいいんだって。で、次は逆方向にむけて(つまり裏返し)走らせる(笑)パースに合ってなくて良し!って」
Michi 「だってそうだよね、カメラに向かって走ってたってさ、体を斜めにして走ってるよね(笑)」
Tom 「子犬なんてよく斜めになって走ってるよね」
田中 「斜めっていうか、直線に走らないで...の方が迫力は出るから、もうこれでいい、とかさあ。」
友永 「うん、だから、細かい動きよりも大きな動きで持ってっちゃうっていうのがあるんだよね」
Tom 「傾きを変えて足元だけなおす、とかね。上手いんだよな〜」
   
〜再びホームズの話〜
   
田中 「ホームズのイメージボード描いているときに、シナリオっていうか、話あったんですよね?」
友永 「いや?話は...宮さんが創ってたのかなあ?こういうエピソードを使おうとかね、原作とかそういうのがあって、話し合いながらこんなもんだそうとか」
田中 「それに沿って多少イメージボードありましたよね」
友永 「あとはね、趣味の話。趣味で描いたやつとかさ、それぞれ出したいもの描いたりとかね」
八崎 「最初に丹内さんの博物館の...」
田中 「なんかマンモスがいたような気がするんだけど...あとパスカビル家の犬みたいなイメージボードもあったような気が...」
八崎 「そんなんありましたっけ?」
田中 「話はないんですけど、イメージボードはあったような」
(編>ありました。下の絵がそうですね。丹内さんが描かれたイメージボードです)
   
   
田中 「『青い紅玉』の話の時に、ちょっと懲りすぎて...(笑)」
八崎 「え?あれ、どんなんでしたっけ?プテラノドンが出てくるやつ?」
田中 「プテラノドンが地上に降りてきて馬車をひっくり返すときに、馬車の中にニワトリを入れていたんでガーッとニワトリを描き出したら...ニワトリは消えないじゃないですか、煙じゃないから」
八崎 「これぐらいの箱からね、死ぬほどニワトリが出てくるんですよ(笑)いくつ出てくるんだろうって....」
田中 「思いついたのはいいけど、あ〜ニワトリは煙じゃないから消えないんだ〜と思って収拾がつかなくなっちゃって」
八崎 「破裂している箱は、いくつかだけなんですけどね」
田中 「馬車の中に箱をギュウ詰めっていうつもりで...でニワトリがバアッと逃げてくかと思ったら、消えなくて...(笑)」
八崎 「箱をいくつか破裂させただけで、もう全然...すごいカットでしたよ」
田中 「あたしとしては...珍しく休日出勤せざるをえなくなっちゃって、休日出勤して必死でニワトリを描いてたの」
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Kei 「宮崎さん、結構たくさん原画描いてたような」
田中 「うん、原画描いてた」
Tom 「速いもん」
八崎 「ただ途中でやっぱり、描ききれなくなったね」
Michi 「だって、最初聞きに行くでしょ?したらさ、原画かいてくれるんだもん。シートもつけてくれて(笑)清書すればいい状態」
友永 「人に説明するより、描いた方が速いんだよ、結構ね。『こういう感じで、はい』っとか言って」
八崎 「説明しながら絵、描いてましたもんね」
Kei 「大塚さんも そうですよね」
八崎 「結局ほら、なんていうの?途中まで描いて『これをおんなじ感じで、最後まで描いて』って、動画にパッと渡してましたよ」
田中 「動画に渡す(笑)すごいですね」
八崎 「結構そういうことありましたもんね。ホームズの時、手紙のトリックがあったじゃないですか。あの文字のところ。宮崎さんが『八崎くん、デザイン学校行ってたからレタリングやった?』やりましたって言ったら『じゃこれをレタリングらしく描いて』って言ってこんなに長いの渡されて」
一同笑
八崎 「だからこう、太いところと細いところとちょっと変化つけて」
田中 「綺麗にいってたですね」
八崎 「それらしく直せって。そういう使い方するのはいいんじゃないですかね」
アヒル 「わかってて使ってくれるのはいいですよね」
田中 「戦艦が沈むところは友永さんなんですか?あの、すさまじい...。水兵さんが山のように」
友永 「それはもう『どうぶつ宝島』のやつだから。高校の時見たのをそのまんま」
八崎 「大砲のシーンは、友永さん独自の...」
田中 「黒コマ白コマ」
友永 「あれが失敗のモトです(笑)」
八崎 「あれがあの当時、あれ以降みんなに流行したんです。田中さんまで黒コマ白コマをやっちゃうんですから」
田中 「わたしはもう...なにも考え付かないので、真似だ、これは真似をするしかないって(笑)」
友永 「あの当時、みんなロボットものから拾ってきて試行錯誤の最中だったんだよね」
八崎 「“みんな”はやってませんでしたよ?(笑)友永さんと金田さんだけでしたよ」
Michi 「いい原画を描けるか描けないかはやっぱりね、作品にもよるし、演出、作監にもよるんだけども、ね」
   
〜気持ちいいタイミング〜
   
田中 「『青い紅玉』の時、友永さんのすごいつけPANが、ガ〜〜〜ッっていうのがあって....コンテを見たときもなんだこりゃ?って思ったけれども、たぶん宮さんは、友永さんがなんかすごいものをつくるだろうと思って適当にコンテを描いてあって...」
八崎 「友永さんにやらせるようにと思ったんでしょうね」
友永 「何々?どこのこと?」
田中 「『青い紅玉』の話の最後の、ロンドンブリッジのところを車でガ〜〜ッと登ってジャンプするところ」
友永 「ああ!橋のやつね」
ポリィを助けるため、
猛スピードでジャンプ!
田中 「そう、なんだか友永さんがすごいレイアウトを描いて(笑)途中で背景を置き換えたりして...」
八崎 「青山くんなんか今でもあのプテラノドンの爆発のタイミングは、もう今までで一番だって言ってましたよ」
友永 「気遣いの青山...(笑)」
一同笑
田中 「彼、爆発にはこだわりますよね」
八崎 「青山くんはね、あれ以来二段爆発をやりたがるんですよ。ボッ!バッ!ボーン!」
一同笑
八崎 「どうしてもあれを越えられないって言うんですよね」
田中 「あ、それなんですか!へー」
八崎 「何回かボッバッボーンをやってるんですけどね『俺がやると、いつも1、2、3(ボン、バン、ボン)になっちゃうんだよ』って言うんです」
一同「ほ〜〜」
八崎 「友永さんのは、なんか『違う』って」
田中 「なんか勢いで描いてる...なんかすごいパワーがありますよね」
八崎 「感覚的に気持ちいいアクションを持ってて...違うんですよね」
田中 「でも、『青い紅玉』の時だって、あたしのシーンが終わって、友永さんのシーンになったらいきなりグレードが違って、すごい勢いでビャ〜〜〜〜っと(笑)」
八崎 「路地を抜けたあたりからですね」
田中 「そうそう!路地を抜けたあたりから別物になってる。友永さんのタイミングは天性の...っていうか」
八崎 「感覚的なんですよ」
Michi 「友永さんのはタイミングがね、気持ちいい」
田中 「そう、すごい気持ちいいんですよ」
Michi 「アニメーションは一枚の絵を見る訳じゃないからね。タイミングがやっぱり大事」
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田中 「この頃はみんなが『ドタバタアニメを作るんだー』っていう気持ちがあって.....。ホームズの時はどうぶつ宝島みたいな感じ、長靴をはいた猫みたいな感じ?のものが来た〜って思って、やりたいことやっちゃえ〜っていう勢いみたいなのがありましたね」
 
 
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