テーマ1:「名探偵ホームズ」
(其の1)
 
座談会のテーマは『名探偵ホームズ』。
会はとある居酒屋で行われ、酒と料理を囲みながら楽しく進行。制作当時のスタッフからとても貴重なお話をたくさん聞く事ができました!と〜っても長いので其の1〜其の3に分けて掲載します。ぜひご覧下さい。(収録:1999年3月某日)
 
 
座談会参加者
()内=ホームズ放映当時、あなたは...
大塚 (別作品に参加。ホームズでは少しだけ原画を描く)
友永 (イメージボード&原画)
Tom (原画その他いろいろ)
Michi (原画その他)
田中 (原画)
八崎 (動画)
Kei (動画)
(動画)
アヒルッチ :以下アヒル(一般視聴者)
しょーじ :以下しょ(一般視聴者)
 
〜「ホームズ」の企画段階では...〜
   
アヒル 「ホームズの企画段階っていうのは、テレコムが完全に?」
大塚 「じゃないんですよ。イタリアのマルコ・パゴットという人がね、イタリア国営放送と持ってきたんですよ」
アヒル 「原作、じゃないですよね?」
大塚 「もちろん原作じゃない。『ホームズ』って言うね、ちゃんとしたキャラクターとして持ってきたの」
アヒル 「あの犬のキャラクターですか?」
Tom 「全然違う絵だけどね。」
友永 「デザインぽいっていうか、カリカチュアライズされていて、目つきが悪かったね」
大塚 「それでね、宮さんがちょっかい出したわけだよね。まるっきり変えたんですよ。変える段階で友永さんとか、Tomさんとか、近ちゃんとかがキャラクターを試作したんですね。」
友永 「近藤さんがキャラをやって、僕らはイメージボードみたいなの描いてたのかな。準備段階が何ヶ月かあって。その間みんなはね、『マンザイ太閤記』やってたのかな。」
   
>遅れて田中さん到着。昔のアニメージュをいっぱい抱えて現れる。
   
田中 「ちゃんと思い出せるようにアニメージュ持ってきたよ〜。どこかに放送開始っていうのが載ってたかな?」
大塚 (ホームズが表紙のアニメージュを見ながら)「アニメージュにも(表紙を)結構描いてるんだね」
 
>昔のアニメージュをじっくり読む友永さん。ホームズとは関係のないページを見ている。
     
友永 「美○本さんだ、懐かしい〜(笑)」  
田中 「そっちにこんど新番組で始まるという記事と、ナウシカの併映でしたっけ?あのときに声優さんがラッシュを見た感想が載ってるの」
アヒル 「ナウシカと併映だったのか...」  
田中 「ホームズの準備に関わってたのはTomさんと友永さんだから私は知らないんですよ
Tom 「僕も関わってないよ〜」
友永 「え?みんな結構描いてたじゃない」
田中 「でもイメージボードを描いてたのはこのお二人で私は出来上がったものしか」
友永 「四人でやってたんだ。近藤さんとTomさんと俺と、丹ちゃん!」
大塚 「丹ちゃんがいたね」
Michi (アニメージュを見ながら)「友永さんの絵(イメージボード)、ずいぶんたくさん載ってますね」 イメージボードより。
うまく剃れるのかな??
友永 「なんかねー、思いつくままね」  
Kei 「友永さん、ひげ剃りしてる絵とか『どうやってひげを剃るんだ?』とかいろんなこと考えてましたよね」
八崎 「潜水艦も描いた?」  
友永 「そうだ潜水艦も描いた」  
Kei 「一番はじめは、ハドソンさんが人間だったんですよね?」
友永 「え?そうだったっけ?」  
Tom 「準備段階ではね」  
友永 「イタリア側のは背景の絵もデザインぽかったよね。で、むこうは二次元的な世界をつくるけど、宮崎さんは三次元的な世界を作りたかったんで、ずいぶん話し合ってたけど」
 
〜そして本編の制作へ〜
   
Michi 「友永さん、こんなんよく描いたね。」(とあるシーンを指し、友永さんを見る)
友永 「若かったね〜〜、いや〜もうそんな元気ないよ(笑)」
Tom 「18年前?」
大塚 「戦艦から水兵がバラバラ落ちてくるんだよね。(笑)」
田中 「(アニメージュを見ながら)放映開始、というのがどこかに載ってたと思うんだけど」
八崎 「放映と制作時期とタイムラグがありますからね。少し」
友永 「あれ何?向こうで最初に放映したの?」(編集:そうです)
Michi 「テレコムで、後でやったの何だっけ。ハエハエ...」 「海底の財宝」より。これが動くっすよ!
Tom 「Michiちゃん作監のやつでしょ。『ブンブンはえはえメカ作戦』」
Michi 「まだ近藤さんいたんだっけ?」  
田中 「いたいた」  
友永 「近藤さんは、ニモのパイロットの時までいたね。」
 
〜テレコム高円寺時代、ショートパンツ騒動?〜
   
しょ 「ホームズをやってた時って、テレコムはどこにあったんですか?」
友永 「高円寺」
Michi 「中野病院の向かいっ側」
八崎 「でも途中で引っ越しませんでしたっけ?中断して...」
友永 「そうそうそう」
田中 「で、新井薬師にきたのね」
八崎 「動画を持ってったんですよね、まだ塗ってないやつを」
大塚 「引っ越しの時にさあ、ショートパンツはいてきたの、女の子がね」
友永 「あ!それは高円寺の時に」
田中 「あれは...引っ越しの時じゃなくって夏だったからじゃないんですか?」
八崎 「いやいやいや...」
大塚 「喜んでたじゃない『わー!すごいすごい』って(友永さんを指す)」
友永 「え?そうでしたっけ?」
田中 「(宮崎さんが)怒ったんじゃない?」
友永 「いやいや、だから...(笑)」
田中 「友永さんは、喜んだ」
アヒル (爆笑)
大塚 「林さんとかさ、こんな短い....(といって足の付け根あたりを指す)」
Michi 「だから、高円寺に来た頃の事でしょ?」
友永 「カリオストロの途中で、高円寺に引っ越したの」
アヒル 「なんか...宮崎さんに怒られたとか?」
「ん〜?誰を怒ったのか知らないけど、私は怒られたことはない」
田中 「KWさん」
「KWさんか(笑)」
田中 「KWさんのホットパンツを怒ったんですよね、宮崎さんが。」
アヒル 「なんで一人だけ怒られるの?(笑)一番短かった?」
田中 「一番はじめにはいてきたから」
大塚 「林さんがね、白いドレスの下がフレアーになっているのを着てきたの。したら朝ね、宮さんが『大塚さん、ちょっと...』『何?』『林さんがね、下着のままで来てるよ..』」
  一同笑
「え〜〜〜?(苦笑)」
大塚 「『何か言わなきゃ』って。あれは下着じゃないよって言ったんだけどね(笑)」
Tom 「高円寺の時代は、トイレ争いがすごかったよね」
友永 「あ〜〜、田中さん、宮崎さんとケンカしてたもんね」
Tom 「おかげで今、スタジオジブリ のトイレはすごくいいんでしょ?」
大塚 「そうそう」
Tom 「女子トイレは、ここ(テレコム)のトイレよりも広いっていうよね」
 
〜バイクで転んだ!?〜
   
アヒル 「ホームズ制作してる時に何か面白い事ってありませんでしたか?」
しょ 「その頃って、世の中何してるんだっけ」
Michi 「その頃ってパッチさん何やってたの?」
八崎 「僕は動画やってましたよ。...宮崎さん、バイク乗り始めたのってこの頃じゃないですか?」
田中 「バイク?」
大塚 「うん、原チンに影響されてバイク乗り始めた」
八崎 「オフロードのでっかいバイク乗ってたんですよね(笑)」
友永 「あれ?ケガしてこなかったっけ?」
Kei 「いや、あれはケガのふりをして、わざと壊れたメガネかけて...」
大塚 「それでやめちゃったんだよね」
田中 「そうだったの?」
Kei 「いや、(バイクを)買った次の日かなんかに、みんなが『ちゃんと帰れるかなあ』て心配していて、そしたら次の日、嬉しがって壊れたメガネをかけて包帯を巻いて『やあ〜転んじゃったよ』って言いながら来たんですけど、それは全部ウソだったっていう話」
アヒル 「すごい(笑)!」
田中 「何のためにそんなウソをつくの?」
Kei 「みんなを驚かすため」
田中 「それだけ?(笑)そんな大塚さんのようなことを...」
大塚 「なにしろね、僕はもうヘルメット探すのが大変だったんですよ。合うのが無くて」
  一同笑
アヒル 「それって、あの...」
大塚 「頭が大きすぎて」
Kei 「フルフェイスでは無かったですよね」
大塚 「そうなんですよ(笑)」
〜大塚さんの描いた原画って...〜
   
田中 「あたし、ホームズで初めて、同じ会社にいるときに大塚さんの原画を見た」
大塚 「ああホント?あのシーンをまとめてやったから..。モリアーティがスチームカーで...」
田中 「あの時の大塚さんの原画あまりにもラフで、ピャピャピャピャ〜と描いてあったんで、こんなのでちゃんと動くのかしら?って思ったんだけど(笑)」
友永 「街中で何?スチームカーで行くヤツ?あ〜〜」
大塚 「僕の原画って相当荒っぽいからね」  
田中 「荒っぽいですよねえ。しかもいい加減にしか見えないんですけど」
  一同笑
田中 「動いたらかっこいいんですごいビックリした!こんないい加減でいいんすか〜〜?(笑)」
大塚 「でも僕は今でもねえ、アメリカみたいに原画はラフで動画を鍛えた方がいいと思うんですよね。『ちゃんと描け』って。原画が丁寧に描いて動画が丁寧にっていうのはね...」
Tom 「○映は長編からそうなんですよね」
大塚 「○映はね。アメリカは今でもそうですよね。」 「青い紅玉 」より。
クレジットは無かったけど
実は大塚さんの作画。
友永 「じゃキャラクター表を見てその人が」
アヒル 「昔の原画ってラフでしたよね。今はすっごい丁寧に書き込んであるけど」
Tom 「繊細すぎちゃって、つまんないね」  
大塚 「それはね、僕は変えた方がいいと思うけど。養成になっちゃうじゃん。『動画もつならこれじゃだめ。描き直せ』って。また描くようになるでしょ。だから丁寧に描くんでしょ。もともと原画を丁寧になっていたのは、どこの人のところにいくかわからないという下請け体制でなっちゃったんですよね」
友永 「動画が下にいればね、直接こうしてくれ、ああしてくれって言えるけどね」
大塚 「だからDNYなんかもね、ネクタイしめたキャラクターがいるとネクタイ全部描いてないんですよね。それは動画の仕事なんです。『キャラクター表見て描け』っていうね」
Kei 「クリーンアップの人じゃなくて、完全にインビトウィーンの人が?」
大塚 「いや、クリーンアップの人です」  
友永 「それはアシスタントがやる仕事だって。ヘ〜そうだったのって(笑)あっちには『私はキャラクターしかやりません』っていう人がいる」
大塚 「そうそうそう。アメリカのドン・ブルースのところに行ったら、完全に分かれていたよね」
友永 「ハイライトを付けるのにもね、『これはエフェクトアニメーターがいるんだ』とか言って。へ〜〜〜〜って(笑)」
アヒル 「影を付けるアニメーター、ハイライトを付けるアニメーター」
友永 「いるんだってそういうのが」  
アヒル 「一段影のアニメーター、二段影のアニメーター...(笑)」
友永 「単純なハイライトだけだよ、それでもねえ...」  
Tom 「その人の仕事を取っちゃいけないの」  
大塚 「職業別に出来ているからね、ランクがね」  
アヒル 「でもやりづらいだろうな。どうやってやるのか未だに不思議なんですよ。キャラクターが絡んでいるカットとか?どういうことをするんでしょうねえ」
友永 「どっちを先に描くのかね?わかんないね」  
アヒル 「私も全然わかんなくって、その秘密をずっと知りたくって...」
大塚 「いや、それはね、ぐるぐるカットが回るんですよ」  
Kei 「でも、先にどっちの人が描くとか」  
大塚 「それはその、ケースケースで決めてるんじゃないかな」
しょ 「製作期間も長いから、くるくる回ったって」  
大塚 「うんそう、長いからね」  
アヒル 「ボロボロになりそう(笑)今コンピュータだからそんなことないのかな。描いたそばからコンピュータにとりこんで見るのかなあ」
しょ 「紙には描いてるんですよね?」  
友永 「紙には描いてると思うよ。マウスでは描いてないと思うよ(笑)」
アヒル 「マウスで描く時代が来るんだろうか?」  
 
 
座談会(其の2)を見る
座談会(其の3)を見る
 
座談会トップページへ
 

Copyright ©TELECOM ANIME All Rights Reserved.