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【コラム】任天堂成功の秘訣(下)

 この3人をまとめ、任天堂を繁栄に導いた経営者は、花札メーカー創業者のひ孫で3代目社長を勤めた山内溥だ。今や世界的に有名になった宮本が「社長の喜ぶ顔が見たくてみんな一生懸命やった」と回想するほど、カリスマ性のあるワンマン社長だった。山内は隠れた才能を持つ人材を見抜き、全面的にバックアップしたため、世界的な経営者の一員に加わることができた。

 任天堂はものすごい発明をしたわけではない。技術もなかった。ブームが過ぎた小型液晶をゲーム機に取り付け、誰でも暇つぶし程度にできる単純なキャラクターのゲームを作っただけだ。ゲーム機の技術力・ソフトウエア・キャラクターの緻密(ちみつ)さ、どれ一つ取ってもライバルのソニーに負けていた。しかし市場を制したのは任天堂だった。

 「枯れた技術の水平思考」。これこそ、サラリーマン横井が語った成功の秘訣だ。ゲーム機に液晶を付けるなど、誰もが知っているありふれた技術を、誰もが知っているほかの分野に適用する応用力のことだ。横井の言葉通り「立派な商品ではなく売れる商品が重要」なのだ。横井は1997年に交通事故で死去したが、今でも日本の経済界では「ゲーム産業の神」とたたえられている。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領が「韓国でも任天堂のようなゲーム機を開発できないのか」と発言した(2月5日付本紙報道)ことから、さまざまな声が上がっている。「まず政府がゲーム産業を支援しろ」という批判から、同社の大ヒットゲーム機ニンデンドーDSをもじった「ミョン(明)テンドーMB(李大統領の名前のイニシャル)」という冷やかしまでさまざまだ。しかし、日本政府の支援が任天堂の成功に一役買ったという話は聞いたことがない。タフでパワフルな経営者、想像力豊かな社員、自然の中で成長したオタク青年の興味深い冒険談があっただけだ。誰でも任天堂のように成功できるという希望があるだけで、絶望的なメッセージはここにはない。

 韓国が任天堂から学ぶべきことは「水平思考」だ。周りを見渡せば横井・宮本・田尻のような人材や、旗を掲げ一歩も退かない不屈の経営者が必ず存在する。それでも韓国人は「到底無理だ」とわめいてばかりいる。政府だけを仰ぎ見る習慣、身近な人材を軽視する「垂直思考」が「韓国の任天堂」誕生を難しくしているのだ。

(記事中の人物名は敬称略)

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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