業績が軒並み急悪化! 追い込まれる巨大マスコミの構造問題(1) - 09/02/09 | 17:29
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・テレビ広告はさらに減る、生き残るのは2〜3社だ――氏家齊一郎・日本テレビ放送網取締役会議長
「10月改編のネットタイムの空き枠25分超」――。昨年9月24日、テレビ朝日の営業局は背筋の凍る思いをしていた。
“ネットタイム”とは、全国“ネット”と、番組時間内に流すCMである“タイム(スポンサー広告)”を足し合わせた業界用語だ。全国放送されるスポンサー広告は長期契約のため、テレビ局の収益の基盤だ。スポンサー広告の最小販売単位は30秒。「25分超の空き枠」は、単純計算で50本以上のCM枠が余っていることを意味する。
10月はテレビ局にとって、年に2回の番組の改編時期だ。つまり、テレ朝は、あと1週間余りで新番組が始まるにもかかわらず、複数の番組でスポンサーが固まっていないという“異常事態”に陥っていたのである。しかも、前週の9月17日から、懸命に営業努力したにもかかわらず、1週間で埋まったのは、たった1分という惨憺(さんたん)たる状況にあった。
そんな苦し紛れのテレ朝が打って出た策が、ネットタイムの強烈な値下げ攻勢。「テレ朝のネットタイムとフジテレビのローカルタイム(関東地区のスポンサー広告)の価格が同じになってしまった。2〜3倍の差があってもいいはずなのに、いくら何でも下げすぎだ」とフジテレビの経営幹部は半ばあきれ顔で吐き捨てる。「おかげでこちらも値下げせざるをえなくなったんですよ」。
「経営環境の悪化が進んでいます。皆さんも協力してください」
昨年秋、TBSの井上弘社長から賃金カットを伝える、こんな文書が管理職に送られた。その内容は部長以上が月額3万円、副部長クラスは月額1万円の一律給与カットというもの。年収1000万円を超える彼らの収入から考えれば大きな金額ではないが、社内には衝撃が走った。「7月に役員もカットしたから管理職も、ということだろうが、女性問題をフォーカスされるような社長にそんなこと言われてもね」とTBS中堅幹部はため息をつく。
70年代後半に視聴率トップを誇ったTBSは今や見る影もなく、放送事業はどん底。関東地区の全日(6〜24時)の視聴率は、フジテレビ、日本テレビ放送だけでなくテレ朝より下の4位。放送事業は今期赤字に転落する見通しで、今や昨年3月に開業した赤坂サカスから得られる不動産収入で生計を立てる“赤坂不動産”とも揶揄される。
苦しいのはみんな同じ 取材カメラを共同化
電通調べによる日本のテレビ広告の市場規模は、2000年以降、おおむね2兆円台で推移。そのうち半分程度を押さえる在京のキー5局は、映画など放送外収入の伸びもあり、07年3月期の合計売り上げは過去最高を記録した。
だが、その状況は07年10月を境に一変する。番組改変月で通常なら広告売り上げが9月比で伸びるべき月に、スポット広告(番組と番組の間に流す広告)が大幅に減少。08年3月期決算はテレビ朝日を除き4社が減収となった。
今期が始まった時点では、各社とも北京五輪というビッグイベントでのスポンサー広告増加による反転を期待した。だが、時が経つにつれて状況は深刻化。急激な落ち込みに経費削減が追いつかず、08年9月中間決算で増益を確保したのは売り上げトップのフジテレビのみ。2位の日本テレビですら、単体決算が1959年の上場以来初の営業赤字に転落する非常事態になった。そして9月の「リーマンショック」以降は、冒頭のテレ朝のエピソードのように、ギリギリまで広告枠が埋まらない綱渡りが常態化した。
広告収入の急減を受け、各テレビ局は制作費の削減を進めている。たとえば日本テレビの今期の制作費は1160億円。これを10年3月期は1000億円以内に収める方針を明らかにしている。制作費削減はスタジオだけでなく報道の現場にも及ぶ。閣議後の会見では、それまでNHKを含む各テレビ局がそれぞれ持ち込んでいたカメラを、1台の代表カメラに集約した。
その結果、下図のように「番組の質低下」「視聴率の低下」につながれば、負のスパイラルがグルグルと回り始める。
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