英国の家庭医制度を紹介―厚労省研究班
「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」(班長=土屋了介・国立がんセンター中央病院長)の第8回班会議が2月9日、東京都内で開かれた。英国家庭医学会のロジャー・ネイバー前会長が「ひとつの国の保健サービスへ家庭医療が果たす役割:英国の経験」と題して講演し、英国の家庭医制度について紹介した。ネイバー前会長は「国内総生産(GDP)が変わらなくても、家庭医制度によって、ヘルスケアは改善されて患者の満足度は向上し、医療労働力が効率的に利用される」などと家庭医制度のメリットを語った。
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高度な二次ケアに加えて、強力な家庭医制度を持つことのメリットとしては、▽限られた医療労働力をより効率的に利用できる▽ハイテク検査・治療がより適正に利用できる▽遠隔地、へき地での医療の水準が高くなる(健康面での地域間格差が解消される)▽患者の満足度が高くなる―などを挙げた。また、「プライマリーケアシステム」が発達することで、▽喫煙、アルコール依存症、肥満などの減少▽糖尿病とそれに伴う合併症の改善▽がんの早期発見▽心疾患、がん、脳卒中での死亡率の減少▽予定外妊娠、若年妊娠の減少▽終末期ケアへの満足度向上▽処方薬のコンプライアンス(法令順守)徹底―などが実現したエビデンスがあることを示した。さらに、日本で家庭医制度が発展することは、「若い医師に対して魅力的なキャリア選択を提供することになるだろう」と述べた。
英国の家庭医制度については、▽市民は家庭医療の診療所に登録している▽家庭医は患者が医療サービスを受けるに当たって最初の接点となる▽家庭医は一人当たり約2000人の患者をケアしている▽家庭医は通常3人以上で共同して、設備の整った診療所で働いている▽患者が二次ケアを受けるためには、救急の場合を除き、家庭医からの紹介が必要となっている▽家庭医が二次ケアへ回すのは約1割▽家庭医はほとんどの検体検査や放射線検査を利用できる―などの特徴を挙げた。
日本と英国の人口1万人当たりの医師数は、22−23人とほとんど変わらない。しかし、病床数は日本の141床に比べ、英国は39床と少ない。これは、英国には家庭医制度があり、患者の9割を家庭医が診療するからだという。
スペシャリスト(専門医)とジェネラリスト(家庭医)のそれぞれの役割などについても言及。病院を基盤としたスペシャリストによるケアが望ましいケースとして、▽救急ケアが必要な場合▽患者が重症または集中看護ケアが必要な場合▽まれな病気で、判断が付かない場合▽ハイテク検査・治療が必要な場合▽専門医が専門的技術を要する多数の患者を診療する場合▽理学療法、リハビリテーション、言語療法など専門化された治療を必要とする場合▽患者が家族や地域からの支援を十分に得られない場合―などを挙げた。一方、地域を基盤とした家庭医療が望ましいケースとしては、▽軽症の病気の場合▽糖尿病、ぜんそく、高血圧、関節炎、認知症などの慢性疾患の場合▽予防医学が必要な場合−などを挙げた。
英国の家庭医養成システムの特徴としては、▽研修医は、指導医と一対一の師弟関係の下で研修を受ける▽研修医は、診療所の戦力として扱う▽臨床、組織、教育の3点で基準を満たした診療所で研修を受ける―などを示した。
更新:2009/02/09 20:10 キャリアブレイン
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