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2009年2月8日

◎野菜増産の動き 地域の食料自給率のカギ

 農家の野菜作りを促す官民の取り組みが北陸で相次いでいる。野菜産出額が全国最少の 富山県は、新年度予算案に野菜生産の機械購入費を助成する制度を盛り込み、石川県では川北町がビニールハウスの建設費補助を打ち出し、JA能美は地元農家の農産物の直売市を定期的に開設する計画という。北陸の農業はコメに偏った生産構造が強みにも弱みにもなっており、野菜の生産を増やすことは、弱みの克服に欠かせない取り組みである。

 良質米産地の北陸は〇六年調査で、農業産出額の六割以上をコメが占めている。特に富 山県はコメの割合が73%と高く、石川県は56%となっている。これに対して野菜産出額の割合は石川県が15%、富山県は5%に過ぎない。

 水の豊かさや積雪の多さなど、コメ中心農業の理由は幾つもあるが、安定性の一方で過 剰生産と価格下落の悩みを抱える。また、北陸の食料自給率は〇六年で79%と全国平均を大きく上回るものの、コメを除く自給率は富山、石川ともわずか13%という状況である。裏を返せば、野菜の地産地消を増やすことが地域の食料自給率向上の大きなカギなのである。

 コメに特化した生産構造は、新鮮で安全な地元野菜を求める消費者ニーズとかけ離れて いるということでもある。このため、行政もコメ生産農家の経営多角化を後押しし、近年は地域の伝統野菜の生産に力を入れている。石川県では加賀野菜、能登野菜のブランド化が図られ、知名度も生産も徐々に高まっている。しかし、伸び悩んでいる品目も少なくない。

 課題の一つは、自家消費にとどまっている野菜作りをいかに拡大するかである。出荷を めざして一歩踏み出せるよう農家の背中を押す施策に、さらに工夫を凝らしてもらいたい。もちろん野菜生産での新規就農や一般企業の参入を一層促進する必要もある。

 野菜の生産拡大で追い風になるのは、地産地消の流れに乗り、地域の農家が野菜などを 直接持ち込む大型直売所が、石川県内などで人気を集めていることだ。JA能美の定期市は、野菜作りにいそしむ主婦らの励みになろう。

◎バイ・アメリカン 貿易縮小で米国も損する

 オバマ米政権が進める予定の超大型の景気対策法案に、公共事業に使う資材などを国産 品でまかなうことを義務付ける「バイ・アメリカン(米国製品を買う)条項」が盛り込まれた。議会の空気を反映したものだそうだが、欧州連合(EU)が米議会に市場を閉ざす保護主義だと再考を求める書簡を送るなど各国の懸念が高まっている。

 米国製品を用いて公共事業のコストが25%以上高くなる場合、外国製品の使用を認め るとなっているものの、外国製品を締め出す効果は小さくなかろう。貿易の縮小−すなわち世界経済を縮小させ、回りまわって米国も損する結果となるのが明らかであり、発動しないようオバマ大統領に求める。

 バイ・アメリカン条項を盛り込ませる根拠にされているのが大恐慌のさなかの一九三三 年に制定され、今も生きているバイ・アメリカン法であり、これによって世界不況を長引かせたという「前科」がある。ただ、そうした保護主義に対しては当時から国内でも厳しい批判があった。保護主義をダム建設に例えて、「アメリカの力をせき止める無駄なダム」だとする批判だ。米国が外国の産品を買うことによって外国が豊かになり、豊かになった国々がアメリカの産品を買ってくれるのを忘れるなということだ。

 超大型の景気対策では総額約八千億ドル(約七十四兆円)が投じられる。製造業の競争 力が低下し、失業者が増加している米国にとって大きな魅力だろう。が、経済のグローバル化がもたらす果実を分け合うことで世界の経済が発展し、米国自身も潤うのである。しかも今度の不況の原因は米国発の金融危機ではないか。

 オバマ大統領にはバイ・アメリカン条項などという時代逆行ではなく、再生可能エネル ギー利用の思い切った取り組みを「公約」通り実行し、次の時代を支える成長の原動力に育て上げることに全力投球してもらいたい。そうした米国に対して各国は協力を惜しむまい。保護主義を排する議会の常識派がオバマ大統領を支えるようになってほしいものだ。


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