第231回
日露衝突を回避せよ
〜高田屋嘉兵衛 決死の交渉劇〜 |
放送日
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<本放送>
平成17年8月24日(水) 21:15〜21:58 総合
全国
<再放送>
平成17年9月2日(金)(※木曜深夜)00:15〜00:58 総合
全国 |
出演者 |
松平 定知 アナウンサー
○スタジオゲスト:山折哲雄さん(宗教学者) |
番組概要 |
その時:文化10年(1813)9月16日 |
出来事:高田屋嘉兵衛の交渉で「ゴローニン事件」の解決が決定的となる |
江戸時代、商人の身で日本とロシアの紛争を巧みな交渉術で回避した高田屋嘉兵衛。嘉兵衛は、商いで北海を航行中、ロシア船にさらわれ捕虜となった。極寒の地から抜け出すために嘉兵衛が挑んだ賭け。それは自らが仲介役となり、日露紛争を解決することだった。やがて武力衝突の危機は高まり、嘉兵衛は自らの脱出のみならず、日本の命運までも背負うことに…。嘉兵衛はどのように日露の衝突を回避したのか。その決死の交渉劇に迫る。 |
番組の内容について |
○「高田屋嘉兵衛」の読みについて
番組では「たかたやかへえ」で統一しています。嘉兵衛のご子孫である高田嘉七氏に確認の上、より一般的な発音である「たかた」としましたが、「たかだ」と発音しても間違いではないようです。
○「ゴローニン」の表記について
ほかに「ゴロウニン」「ゴローウニン」「ゴロヴニン」などの表記がありますが、研究者の方の見解に基づき今回は「ゴローニン」としました。なおNHKの過去の番組でもほとんどの場合「ゴローニン」と表記しています。
○「ウラァ タイショウ」という言葉について
「ウラァ」はロシア語で「万歳」という意味です。嘉兵衛がディアナ号の乗組員たちから「万歳、大将」という意味で伝えられた言葉です。
○「高田屋嘉兵衛遭厄自記」について(以下「遭厄自記」)
今回の番組の根本史料の一つで、「たかたやかへえそうやくじき」と読みます。写本が大阪府立中之島図書館に所蔵されていますが、一般には公開されていません。○嘉兵衛がロシア船に遭遇した時の感想について(「遭厄自記」からの引用・現代語訳)
「不審に思って目をこらすと小舟が近づいてきた。すると突然、船底から10人ほどが姿を現した。ロシア人だった。」
○嘉兵衛がロシアに捕らえられた時の感想について(「遭厄自記」からの引用)
「此度天運つき候(このたびてんうんつきそうろう)」
○嘉兵衛の書状について
史料名は「高田屋嘉兵衛書状」。神戸市立博物館に所蔵されていますが、一般には公開されていません。
○嘉兵衛が家族に宛てた手紙について(「高田屋嘉兵衛書状」からの引用・現代語訳)
「私に構うことなく商売に励んでくれ。おふさはただでさえ病人なのだから、くれぐれも心配しないように。来年には帰ってくるから。」
○カムチャツカ抑留中の嘉兵衛の感想について(「高田屋嘉兵衛上申書」からの引用・現代語訳)
「極力、節約を覚悟した。」
○嘉兵衛の脱出を賭けたリコルドとの交渉について(「遭厄自記」からの引用・現代語訳)
嘉兵衛「日本がゴローニン艦長を不法に捕らえたと恨んでいるだろうが、それは間違いだ。そもそもの問題は、フォボストフの暴行にある。それゆえ日本では、以降やって来たロシア人は生け捕り吟味せよとの、国の命令があったのである。」
リコルド「フォボストフの行いはロシアでも許されるものではない。ついては、艦長たちを取り戻す方法を示してはくれまいか。」
嘉兵衛「ロシアが日本に対し暴行行為を謝罪すれば、ゴローニンは解放される。」
○嘉兵衛が見た日本側の「要求文書」について
史料の日本での名称は「高橋三平・柑本兵五郎覚書」。近年、ロシア関係史の権威である岡山大学名誉教授・保田孝一先生がロシア国立史料館で発見されました。番組でご紹介したものは、原本のコピーで、保田先生が管理されています。
○日本側のゴローニン艦長解放の条件について(上記「要求文書」からの引用・現代語訳)
「海賊行為について、ロシアは謝罪文を提出すべし。そうすれば、ロシア人捕虜全員を返す。」
○嘉兵衛の人生観を表した言葉について(「遭厄自記」からの引用・現代語訳)
「私は一介の商売人である。心やすく暮らせれば、それでいい。」
○リコルドが嘉兵衛に宛てた手紙について(斉藤智之訳「対日折衝記」からの引用・現代語訳)
「親愛なる大将へ。今も私の友情に変わりはありません。あなたから学んだ、隣国への思いやり。私は、日本とロシアが友好を深めることを願っています。」
○嘉兵衛がリコルドに送った歌について(謡曲「高砂・四海海」からの引用)
「四海波静かにて 國も治まる時つ風 枝を鳴らさぬみ代なれや 逢ひに相生の松こそ めでたかりけれ」 |
番組中に登場した資料について |
・「高田屋嘉兵衛肖像画」 北方歴史資料館 蔵
・「リコルド肖像画」 北方歴史資料館 蔵
・「高田屋嘉兵衛遭厄自記」 大阪府立中之島図書館 蔵
・「俄羅欺人生捕図」 早稲田大学図書館 蔵
・「高田屋嘉兵衛書状」 神戸市立博物館 蔵
・「高田屋嘉兵衛上申書」 市立函館図書館 蔵
・「高橋三平・柑本兵五郎覚書(日本側の要求文書)」 ロシア国立史料館
蔵
・「高田屋嘉兵衛銅像」 北海道根室市・金刀比羅神社
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参考文献 |
・「高田屋嘉兵衛遭厄自記」 高田屋嘉兵衛翁顕彰会
・「日本幽囚記(上・中・下)」 岩波文庫
・「北海の豪商 高田屋嘉兵衛」 柴村羊五著 亜紀書房
・「高田屋嘉兵衛 日露交渉の先駆者」 須藤隆仙著 国書刊行会
・「高田屋嘉兵衛と北方領土」 原喜覚著 ぎょうせい
・「高田屋嘉兵衛」(絶版) 堀書店
・「高田屋嘉兵衛翁伝」 高田屋顕彰館・歴史文化資料館
・「対日折衝記(訳本)」 斉藤智之著 高田屋顕彰館・歴史文化資料館
・「菜の花の沖(一〜六)」 司馬遼太郎著 文春文庫
・「司馬遼太郎全講演(3)」 朝日文庫
・「北海を翔た男 まんが高田屋嘉兵衛ものがたり」 クニ・トシロウ著 実業之日本社
・「謡曲集(上)日本古典文学大系40」 岩波書店 ほか |