不適切な運営が指摘されている財団法人・日本漢字能力検定協会(本部・京都市)が、理事長らのファミリー企業に06年からの3年間で約66億5千万円の業務委託費を支出していたことが、所管する文部科学省の調査でわかった。協会は当初、全容を文科省に報告せず、指摘を受けるたびに修正を繰り返したという。
文科省は、公益を目的とする財団法人が特定のファミリー企業の利益をはかるような行為があったとすれば問題だとしており、9日午前、委託先の企業の事務所を調査し、午後には協会本部へ立ち入り検査に入った。不透明な実態を改めて洗い直す考えだ。
文科省によると、漢検協会が多額の業務委託費を支払っていたのは、大久保昇理事長と息子の浩副理事長がそれぞれ代表を務める4社。ビルの賃貸料や受検料の決済、データ処理といった費用として処理されていたという。
しかし、文科省への報告は昨年10月時点で2社への約2億円分だけで、その後、同省が提出書類の矛盾点や外部からの情報を合わせて指摘すると、協会側はそのつど修正。先週の修正報告で、ようやく「委託先は4社、支出額は3年で計約66億5千万円」ということが確認されたという。
「公益法人として利益を適切に還元するように04、05年度に指導したが、対応が不十分で07年度も改めて指導した」「おかしなことが多すぎる」。文科省の担当者は協会についてこう指摘する。
財団法人の公益事業について、指導監督基準は「健全な運営に必要な額以上の利益を生じないよう」と定めている。漢検協会は、「検定ブーム」もあって04〜06年度の3年間に毎年7億〜8億円の利益を上げ、文科省は「受検料を下げるか、利益を公益的な事業に回すように」と04年度から2年連続で指導した。