あの人は今こうしている　柏村武昭（「お笑いマンガ道場」の司会が懐かしい）

「ローカル局の人気アナ」という看板は選挙の際、強力な武器になるが、この人の場合、それだけじゃない。人気番組の司会で中央でも顔が売れていた。０１年７月の参院選で広島選挙区から立候補して当選した柏村武昭さんだ。その後、任期満了を前に議員を辞職し、０７年４月、広島市長選に出馬。しかし、ここでは一敗地にまみれた。今どうしているのか。

●「ようやく父親らしいことができました」

「今はもっぱら読書と家族サービス、あと、たまにゴルフをやったり、共同馬主なもんですから、競馬をしたり……。そんな感じで、まさに行雲流水の毎日を過ごしてます。放送界の３５年、政界での約６年は休日らしい休日もなく、ひたすら走り続けましたからね。おかげで中３の一人娘とじっくり話す機会も増え、ようやく父親らしいことができました」

　広島市中区にある事務所で会った柏村さん、こういって笑顔を見せた。マスコミに登場するのは一昨年４月以来とか。

「市長選に負けたのは悔しいですよ。でも、負け惜しみじゃなく、人生を振り返り、これからの道を熟慮するにはちょうどよかったのかもしれません。自分はけっこう楽天家なんです」

　広島県三次市出身の柏村さんは早大文学部を卒業後、中国放送に入社。７５年、ローカル局アナのステップアップ番組「飛び出せ！全国ＤＪ諸君」でグランプリを獲得したのを機にフリーになり、川島なお美の出世番組「お笑いマンガ道場」（中京テレビ）の司会などで活躍した。また、「柏村武昭のテレビ宣言」（広島テレビ）は柏村人気を不動のものにした夕方ワイドとして知られる。

「『テレビ宣言』は平均視聴率が常に２０％強、ＮＨＫの大相撲中継に視聴率で勝った初めての番組でした。丸８年、２０００回ちょい続き、この間、脳梗塞で倒れたのに２週間で復帰して、周囲をア然とさせたこともありました、ハハハ」

　そして、０１年７月に参院選広島選挙区から無所属で立候補。当選後は自民党に入党した。

「一番印象に残ってるのは、防衛庁の防衛省昇格ですね。参議院外交防衛委員長のときに道筋をつけることができました」

　０７年３月、参院議員を辞職して翌月の広島市長選に立候補。そこで挫折を味わった。

「衆院選？　今のところ、立候補予定もつもりもありません。市長選ではインターネットで誹謗（ひぼう）中傷され、ワタシだけじゃなく、家族や支援者の方までとても嫌な思いをした。あんなことはもう……」

　その誹謗中傷とはカネと女、それと体調に関してのもの。公式の場で否定しても匿名で大量配信されるガセ情報に対応が追いつかず、最後まで振り回されたそうだ。

「話のプロとしての原点に戻り、今年春から小学生から社会人までちゃんとした日本語と話術を学べる『柏村塾』を立ち上げる予定で、これと並行して講演やボランティア活動にも力を入れていくつもりです」

　夫人ははしだのりひことエンドレスの元ボーカル、松竹洋子さんだ。

（日刊ゲンダイ2009年1月29日掲載）