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し烈バトル!オレオレ詐欺「撲滅月間」

10月の撲滅月間でATMコーナーで警戒する警察官
10月の撲滅月間でATMコーナーで警戒する警察官
Photo By 共同

 振り込め詐欺事件の発生が後を絶たない。2004年に認知件数、被害金額ともにピークに達し、その後、減少傾向に転じたが、08年は対前年比1割増となった。警察当局はこの2月を昨年10月に続き「撲滅月間」に指定。抑止に加え、より捜査に比重を置いたシフトを敷いている。多様化する手口にどう対処しているのか。詐欺グループのメンバーは?関係者らを取材した。

 東京都江東区の銀行ATM(現金自動預払機)前。旅行代を振り込もうと列に並んでいた女性(70)に警官が注意喚起した。振り込め詐欺とみられる電話が自宅にかかってきたことがある女性は「心強い」と話した。

 昨年10月の撲滅月間は、ATM付近に警官を張り付かせるなど抑止を前面に出し、同3〜6月の月平均と比べ認知件数で38・1%、被害額で46・6%減少。それでも、同月の被害額は15億円を超えた。ある捜査員は「まさに振り込もうとしている人たちは、制止をなかなか聞いてくれない。“息子に何かあったら責任取れるのか”と。止める強制力はない。抑止策にも限界はある。検挙に勝る防犯なしだ」と打ち明けた。

 警察庁刑事局捜査第2課・保田泰三課長補佐は、捜査に比重を置いた2月の対策について「組織犯罪処罰法の組織的詐欺を適用すれば、初犯で10年の実刑判決も出る。リスクの大きさを認識させ、確実に犯人グループを撲滅したい」と話した。

 各都道府県警ではあの手この手の撲滅作戦を展開。「大きな犯罪ツールの携帯電話を使えなくする」(保田課長補佐)のが「電話作戦」だ。突き止めた犯人側の番号に集中的に「警察だ」と電話をかけ、携帯電話を1つ1つ事実上使用不能にするのが狙い。熊本県警では20秒おきに電話をかけ警告メッセージを流す装置を開発。「その分、人員を捜査に回せる」(同県警)メリットがある。

 昨年10月まではATMを使わない手口は8・2%だったが、同11月以降は20%前後に増加。現金を直接受け取る「手渡し」や宅配便を使った手口が目立ち始めている。

 神奈川県警ではいち早く「だまされたふり作戦」を導入。犯人をおびき出し現金受け渡し場所で摘発するもので、既に4人を逮捕している。

 全国の被害の約2割が集中する警視庁は誘拐事件を専門に扱う捜査1課特殊班による新部隊「ステルスチーム」を結成。敵のレーダーにキャッチされることなく接近し攻撃する米戦闘機「ステルス」をイメージし命名。刑事部の山本仁参事官は「特殊班は犯人に悟られないように追跡する技術に優れている」とし、宅配便利用など新手の詐欺犯摘発に期待を込めた。

 一方、これまでの逮捕者は、「出し子」と呼ばれ、犯行グループでは末端の現金引き出し役がほとんど。犯罪事情に詳しい関係者は「出し子に指示を出す人物は、ほとんどすべて偽名で他人名義の携帯電話を使うから、出し子から上の捜査は楽ではない」。こうしたこともあり、警視庁では尾行や組織実態解明を得意とする公安部も投入、首謀者逮捕を加速させたい考えだ。

 詐欺グループの実態について、この関係者は「活動しづらくなったヤミ金グループから派生したものが多い」と指摘。警察庁は、これらに暴走族OBも加わっていると分析。暴力団の介在について、ある関係者は「シノギ(資金獲得)で振り込めをやっているなんて、この世界で恥ずかしくて言えない」と強調。指定暴力団の、ある有力団体は振り込め詐欺禁止を通達している。

 一部供述によると、「オレオレ学校」も組織され、サイレンなど効果音を流しながら上司役、弁護士役、警官役などを演じる練習をし、シナリオをつくる脚本家もいる。首謀者らはインターネット上の「闇の職安」やパチンコ店で縁もゆかりもない人間を出し子として集める。その年齢層は昨年、20代以下が8〜9割だったが、今年は30、40代が増加。雇用悪化など社会情勢も影響してそうで、撲滅の道は容易ではなさそうだ。

[ 2009年02月09日 ]

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