省令などの案について国民から広く意見を募る意見公募(パブリックコメント)の制度で、厚生労働省が行政手続法の規定に反して、結果の公示を怠っていたことが早稲田大学の大学院生の指摘でわかった。2カ月を超えて未公示が続いた事例だけで48件に上る。同省は6日、チェック体制を整える方針を発表した。
意見公募の手続きは行政手続法で法制化され、06年4月に施行された。同法では、意見公募の手続きを実施して省令などを公布した場合には、それと同時期に、寄せられた意見やそれへの対応などをウェブサイト「電子政府の総合窓口」に公示することを省庁に義務づけている。
ところが、厚労省では、この結果公示が長期間にわたって行われていない事例が多々あった。早大の院生は、政治学研究科ジャーナリズムコースの授業「調査報道の方法」の実習課題として未公示の事例を調査。1月4日に厚労省にその理由を問い合わせた。同省は「現在、準備中」と回答し、同月9日以降、相次いで公示を始めた。
朝日新聞の集計では、2月5日までの1カ月間に公示された同省と社会保険庁の意見公募27件のうち、18件が省令などの制定から2カ月以上も過ぎての公示だった。中には制定などから2年半も遅れたものもあった。
同省によると、6日時点で、未公示がさらに38件あり、そのうち30件が2カ月を超えているという。大臣官房総務課の担当者は朝日新聞の取材に「担当課は失念していたのかもしれないが、それをチェックする体制がなかったのも反省点」と話した。
早大院生の調査によると、国土交通省、総務省、環境省、農林水産省なども意見公募の結果公示を怠っているケースがあり、理由を問い合わせた。そのためか現在、政府のホームページでは意見公募結果の公示ラッシュが続いている状況だ。