ロンドン(CNN) 米ノースカロライナ州でこのほど、最新式のレーザーメスを使った脳腫瘍の手術が成功し、1人の青年の命が救われた。担当医は3日前にこの機器をCNNのニュースサイトで知り、急きょ取り寄せたという。
患者はブランドンさん(19)。昨年12月に激しい頭痛と意識の混濁を起こし、同州ウェークフォレスト大の救急センターへ運ばれた。検査の結果、脳の中央部に非常に大きな腫瘍があることが判明。担当の神経外科医、トーマス・エリス博士は2日後、6時間にわたる手術を行ったが、除去できたのは腫瘍の約2割にすぎなかった。
「腫瘍の組織は非常に硬く、切除しようとしても5分でメスの刃が鈍くなってしまうほど。メスを何本も取り替えたが、完全に取り除くことは不可能だった。15年の手術経験で最も手ごわい腫瘍だった」と、エリス博士は振り返る。
残された道は放射線治療と思われたが、これほど大きな腫瘍ではそれも難しい。落胆のうちに帰宅したエリス博士がいつものようにCNNのサイトを開くと、医療ページの見出しが目に飛び込んできた。軍事用の技術を活用して、精度の高い二酸化炭素レーザーメスが実用化されたというニュースだった。
マサチューセッツ州ボストンのオムニガイド社が昨年9月に発売した「ビームパス NEURO」は、正確な操作が可能なペン型の機器。脳や神経などでこれまで手術が困難だった位置でも、周囲の組織を傷つけずにレーザーをあてることができ、実際に成功例も報告されているという。
エリス博士はその夜のうちに、記事で紹介されていた神経外科医に連絡。この医師からオムニガイドを紹介され、事情を話した。「72時間後には、ビームパスが送られてきた。同社から派遣された医師の説明で、使い方はすぐに分かった」と、同博士は語る。
レーザーメスによる再手術は翌日に行われた。4時間後には、残っていた8割の腫瘍がすべて取り除かれ、ブランドンさんはその日のうちに食事ができるまでに回復した。再発の可能性には注意する必要があるが、術後の経過も順調だという。
「新たな機器の登場で、脳神経外科の手術現場は今後大きく変化するかもしれない。いずれにしても、こうやって困難を乗り越え患者を救うことが、われわれ神経外科医の生きがいだ」と、エリス博士は話している。