心臓に中性脂肪がたまり重い心不全を起こす新しい病気を、大阪大病院の平野賢一病棟医長(循環器内科)らが見つけ「中性脂肪蓄積心筋血管症」と名付けた。心不全の多くは原因不明だが、一部はこの病気の可能性があるという。
国立循環器病センター、浜松医科大との共同研究。平野医長らは、原因不明の心不全のため大阪大病院で心移植を受けた男性患者の、もとの心臓を調べた。すると、心筋細胞の中に、通常ならわずかなはずの中性脂肪が大量に蓄積。心筋の一部は壊死(えし)していた。
心筋は通常、食事などから取り込む「長鎖脂肪酸」を分解することでエネルギー源の7割をまかなう。この患者は、心筋同様に長鎖脂肪酸をよく使う上腕の筋肉にも中性脂肪がたまり萎縮(いしゅく)して動きにくくなっていた。
長鎖脂肪酸を分解する酵素の遺伝子を調べると、生まれつきの異常があり分解できずに中性脂肪に変えることも分かった。心臓の冠状動脈にも中性脂肪が蓄積し、動脈硬化が起きていた。
動脈硬化は従来、コレステロールが原因とされ、中性脂肪で起きた例の確認は初めて。
平野医長は「中性脂肪で動脈硬化が起きている人が他にもいないか、検討が必要だ」と話している。【渋江千春】
毎日新聞 2009年2月8日 東京朝刊