佐久総合病院(佐久市臼田)の分離移転再構築問題は7日、村井仁知事、佐久市の三浦大助市長、病院を運営する厚生連の若林甫汎(としひろ)理事長による5度目の3者協議で、ようやくめどがついた。厚生連側が手順を踏まずにツガミ跡地を取得した経緯を謝罪し、同地を移転候補地として手続きを進める--などとする知事の裁定案に、市と厚生連の両者が「現実的な選択肢」(知事)として受け入れ、合意に至った。【神崎修一】
3者協議は同日午前、県庁であった。裁定内容は(1)厚生連が一連の土地取得手続きを謝罪、市に始末書を提出(2)厚生連は本院機能が残る臼田地区住民に説明を尽くす(3)基幹医療センターの建設候補地をツガミ跡地(佐久市中込)とする--など4項目。
協議後、3者による緊急会見で、若林理事長は「医療一本やりで市政について無知だった。慎重さを欠き迷惑をおかけした」と陳謝。その上で「臼田地区住民は不満や不安があると思うが、理解を得たい。市発展のために地域貢献に全力を挙げたい」と述べた。
三浦市長は「再構築そのものに反対していない。『一刻も早く解決したい』との知事の意向もあり、お受けした」と説明。村井知事は「ゴールでなくスタート。再構築が実現するよう支援したい」と語った。
再構築を巡っては厚生連が05年5月にツガミ跡地13ヘクタールを取得したのが発端。跡地は工業専用地域内にあるため、病院建設には用途変更が必要だが、市が認めずに、事態がこう着。県が市と厚生連に呼びかけ、昨年10月から3者協議を随時開催し早期解決を模索していた。
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■解説
約5カ月間にわたった県、佐久市、長野厚生連の3者協議で、一定の方向付けがなされたのは、こう着状態が続けば、佐久総合病院が拠点病院の役割を果たす東信地域の医療崩壊につながると、県が強く懸念したことが大きい。4月に市長選を控える中で移転問題が「最大の争点になりかねない」との判断も働いたようだ。今期限りで引退する三浦大助市長の任期内での合意を目指す必要があり、市と厚生連の両者が現実的な判断をしたと言える。
厚生連が、分離再構築用地としてツガミ跡地を取得して3年9カ月。三浦市長は一貫して「病院建設ができない工業専用地域」と用途変更に反対姿勢を崩さず、市として臼田地域に3候補地を、3者協議入りしてからは旧佐久市内の2候補地を提示。しかし、既に用地取得に約24億円を投じた厚生連にとって、新たな投資はほぼ不可能だった。
厚生連は「土地を取得すれば何とかなる」との思惑があったとみられる。一連の取材でも、用地取得後、市に対して具体的な対応策を講じたり、働き掛けたりする場面にほとんど遭遇しなかった。
3者協議後、三浦市長は市議会全員協議会で「裁定案はゴールではなくスタート」との認識を示した。今後、双方がいかに協調態勢を取れるか。臼田地区住民の理解をはじめ、用途変更に伴う公聴会など建設着工までクリアする課題は少なくない。【藤澤正和】
毎日新聞 2009年2月8日 地方版