【 蛸 グ ラ フ 】
八方手詰まり。
 



ドラゴンエイジPure誌掲載の読みきり作品「シンデレラシューズ」の全頁解説第10回です。


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これ以上ないほどに、果てしなくネタばれなので
必ず本編を読んだあとで読みすすめてください。
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■p35,36(p181,182)

アマリを出待ちするロレンゾ。
帽子が表すように、アマリの頭の中は蝶とお花(受粉の性的なメタファ)でいっぱいな状態なので
ロレンゾのことを気遣える配慮はできません。

触れるのを忘れましたが、最初の方のパーティドレスの胸元についていたのも蝶です。
しかし蝶と言うには大きすぎて、どこか奇妙に感じさせるデザインにしました。
アマリの女装はある意味、自然に逆らった可憐さですので、
こういう仕込みをいれたほうが微妙な違和感を表現できるかもしれないという試みです。
アマリが男の子だといっても結局は身体性の薄いマンガ絵である以上、
可愛い服を着せた女の子と区別できない限界があるので、こういう絡み手を使っています。
正直、自己満足の範疇といわれればその通りで、どこまで効果があるか甚だ疑問ですが、
どこか妙だな、と思った人が一人でもおられればありがたい話です。

女装者を”蝶”ならぬ”蛾”のように扱うのか、という批判もできるかも知れませんが
トランスジェンダーにも触れるこの作品で
ただ無邪気に女の子より綺麗な男の子として扱うのは、
性差の要素を盛り込んだ物語とするには不足だと考えた結果です。
ここらのことはまた後で踏み込んで述べることになると思います。
こうしてみっともなく解説を書くことになった原因が含まれることでもありますので。

■p37(p183)
「男が履いたってヒールは折れやしませんよ」
直接繋がるシーンはないですがここは「キンキーブーツ」の靴職人が
男の体重に耐えられるピンヒールを試案するシーンを思い出しながら描きました。

この映画は倒産の危機を迎えた靴の会社が起死回生にドラァグクイーン向けのブーツを作るというお話。
監督のコメンタリではやはりシンデレラを意識している旨が語られていて
英国らしいひねったユーモアと構成で”異文化交流”が描かれてます。
個人的にはこの映画の魅力はキウェテル・イジョフォーが繊細に女性を演じきったローラに尽きると思います。


■p38(p184)

最初のバージョンのネームではロレンゾとアーチボルドの絡みが薄かったので
追加でここでわかりやすく悪役を演じて貰いました。

描いてるときは気づかなかったのですが、一コマ目のアマリは余計でしたね。
前ページ最後のコマ、このページの一コマ目、六コマ目と連続してアマリの背中が見えると、
すごくノロノロ走ってるように見えてなんか間が抜けてますねー・・・。

■p39(p185)

リアルに考えると、馬車や従者の身なりも主人のステータスを示すものなんで、小汚い格好というのはあり得ないんですが
そこはアマリの裁量でロレンゾの父の贈り物である”一張羅”を許されているということでご容赦を。

補助動力がついている珍奇な馬車に乗っているのは、アマリの好奇心の強さを示しています。
実際の一九世紀末にも自動車は走っていましたが、多くの英国貴族はこれを不粋なものと見ていたようです。
グラナダテレビのドラマ、シャーロックホームズの冒険でも、貴族らは全て馬車を使いますが
唯一成り上がりの金持ちが虚栄心を表すような形で自動車を使用しています(ソア橋のなぞ)。


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