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地域防犯にもひと役 ラッパで豆腐引き売り/川崎
「パ~、プ~」。再開発が急速に進む川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺で、懐かしいラッパの音が響き渡る。都内で豆腐の引き売り営業を手掛ける企業が昨年末に県内に初めて進出した。リヤカーを引いて豆腐を売り歩く様子は昭和の雰囲気を醸し出すとともに、近所付き合いが希薄になる中で地域密着型を生かした地域防犯にも役立っている。
この企業は「野口屋」の屋号で事業を展開する「ターベルモーノ」(東京都中央区、野口博明社長)。野口社長が富山県の禅寺に伝わる豆腐の製法を再現し、二〇〇三年に東京・築地に一号店をオープンした。営業時間内に売り切れなかった豆腐を販売しようと周辺で引き売りをしていたところ、遠くに買い物に行けない高齢者らに好評で、予想以上の売り上げだったことから本格的な行商ビジネスに乗り出した。
看板商品の豆腐は静岡・伊豆の同社工場から直送され、絹・木綿とも一丁三百五十円。「大豆の味がしっかりしている」(同社)のが特徴。巣鴨や浅草、中野などに営業拠点を増やすなど売り上げは順調に伸び、昨年十二月から今年一月にかけて、川崎市の川崎区と中原区に相次ぎ拠点を新設した。
楽器店に特別注文した真ちゅう製のラッパを片手にリヤカーを引く販売員は二十~三十代が中心だ。通行人に明るく「こんにちは」と話しかけ、積極的にコミュニケーションを図る。
これまでに、ラッパの音でいつも自宅から出てくるお年寄りが出てこないことから孤独死発見につながったことも。警察と協力して防犯や交通安全のチラシを配るなど、地域住民の安全・安心に貢献している。
武蔵小杉駅周辺の住宅街で朝から夕方まで引き売りを行う桂大生さん(29)は「売り切れることもしばしば。お客さんに感謝されるのがうれしい。街の一員となって今後も地域を明るくしたい」と意気軒高だ。
同社は今年夏までに横浜、川崎市内に新たに三~四拠点増やす計画。広報担当の柿沼大介さん(25)は「失業者が増加する中で雇用創出につなげるとともに、エコや地域防犯、伝統文化の継承など、さまざまな面で役立ちたい」と話している。
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