「世界を変えられるのはG2(米中)だ」 ブレジンスキー元大統領補佐官 FT

「世界を変えられるのはG2(米中)だ」
ズビグネフ・ブレジンスキー(カーター大統領時代の国家安全保障担当大統領補佐
官。本記事は今週北京で行われた演説に基づく。)
The Group of Two that could change the world
By Zbigniew Brzezinski

ジミー・カーター大統領が1978に私を中国に派遣した当時(訪中は秘密裏での交渉開始が目的であり、これが米中関係の正常化につながった)、北京に居住する外国人の数はわずか1,200人であった。つい先日、1,100人の米国政府関係者が北京の新しい大使館へと移り住み、現在では15万人の外国人が北京で生活しているということだ。我々の世界は変わった。正常化のおかげで、より良く、より安全になったのだ。

正常化により、ほぼゼロの状態から安全保障面での協力が促された。これは米国と中国の双方にとって純然たる利益となっている。その効果は、冷戦におけるグローバルなチェスの状況を一変させ、ソ連の不利に働いた。間接的には、米中国交正常化によって、?小平の包括的な経済改革という決断が促されたのである。中国の経済成長は、国交正常化以降の米中間での貿易・金融関係の拡大がなかったとしたら、相当に困難だったはずである。

それでは、現在の米中関係の戦略地政学的なステータスはどのような状態なのか?

雑誌「Liaowang」の或る記事(2008年7月14日付)は、米中関係について「複雑な相互依存("complex interdependence")」だと表現している。双方が相手のことを現実的かつ穏当な観点から評価しており、「双方が既存の国際ルールの範囲内で競争し、協議出来る」関係である。もちろん、グローバルに台頭している中国は修正主義の大国であって、国際システムの重大な変更を望んでいる。しかし、忍耐強く、慎重で、かつ、平和的な方法で、それを追求しているのである。外交政策を扱っている米国関係者が特に評価している点は、中国の戦略的な考え方がグローバルな階級闘争や暴力的な革命という概念から脱却し、むしろ、「協調的な世界("harmonious world")」を求めつつ、グローバルな影響力における中国の「平和的な台頭("peaceful rising")」を強調していることである。

こうした共通の考え方のおかげで、米中双方が、未解決の又は潜在的な見解の不一致に取り組み、北朝鮮の核開発計画といった課題で協力することが容易となっている。米中の相互依存関係の重要性を常に念頭に置くことで、我々は他の困難な問題を処理することが出来るだろう。

現在、米中が共通で抱くべき重大な目標というのは何であるのか?米中関係は不変であってはならない。拡大するか縮小するかである。世界にとって、そして米中にとってもメリットがあるのは、米中関係が拡大する場合である。実際問題として、米国と中国は、今回の経済危機への対応に係る緊密な協力という直近のニーズを越えて、戦略地政学的な協力を拡大・深化する必要があるのだ。

イランとの対話への直接的な参加国として中国は必要である。イランとの交渉の取り組みが失敗に終わった場合、中国も影響を受けることになる。インド・パキスタン関係に関する米中協議は、恐らく、たとえ非公式な調停であっても、より実効的な対応につながるはずである。二国間の紛争は地域の惨事となり得るのだ。中国はイスラエル・パレスチナ間での紛争の解決への貢献についても積極的に関与すべきである。この問題は、中東地域の急進化や不安定化のリスクを増しつつある。

米中は、気候変動によって提示されたグローバルなリスクへの対応でも共通の見解を構築する必要がある。米中は、破綻国家への国連平和維持軍の配備の待機を増強する可能性を追求すべきである。米中は、核兵器根絶という選択肢のグローバルな採択に向けた国際イニシアティブが核兵器拡散防止にとって有効であるかも知れないということについて議論していくべきである。米中は、現在のG8首脳会議について、意思決定に係るグローバルな集合体(サークル)を広げるために、また、経済危機への包括的な対応を確立するために、G14やG16へと拡大することで緊密な協力をすることが確実に必要である。

しかし、これら全てのことを進めていくために、我々に必要なのは非公式なG2である。米国と中国の関係は包括的なパートナーシップでなければならない。米国が欧州や日本と築いているのと同じような関係である。米中のトップリーダーたちは、したがって、単に二国間関係についてではなく、広く世界のことについて、個人レベルで徹底的な議論を行うために定期的に非公式な面談を行うべきである。

これらは全て、政治的にも哲学的にも、野心的な方向を目指している。中国が「調和」を強調していることは、米中サミットへの有効な出発点として機能するはずである。大量破壊的な「文明の衝突」のリスクが高まっている時代において、正真正銘の文明の和解を慎重に進めることは緊急的に必要なのである。これは、バラク・オバマ次期大統領(彼は本質的に調停者である)が親近感を抱くべき任務であり、また、胡錦涛主席(「和諧社会("a harmonious world")」という概念の創設者である)が歓迎すべき任務なのである。我々の集合体としての未来を形成する上で最も偉大なポテンシャルを有する二つの国家に相応しいミッションなのである。

by abetchy | 2009-01-16 00:29 | 論調 | Comments(0) 


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