文化
バレンタインデーの「逆チョコ」浸透する?
商品名を反転させたパッケージのデザインで「逆チョコ」を強調する限定品 |
「ジャニーズ系タレントが元横綱大乃国のようにスイーツ評論家として活躍すれば、『逆チョコ』が一気に盛り上がるかも」と話す藤本憲一さん=西宮市池開町、武庫川女子大 |
「チョコをもらいたいと女性が思う場合、渡しやすい雰囲気をつくって」と話す森岡正博さん=堺市中区、大阪府立大 |
バレンタインデー(十四日)が近づいた。今年は、男性から女性にチョコレートを贈る「逆チョコ」が一つの話題になっているという。「逆…」は、新しいコミュニケーションの形として浸透するだろうか。武庫川女子大准教授で嗜好(しこう)品の現状に詳しい藤本憲一さん(メディア論)と、「草食系男子の恋愛学」などジェンダー(社会的性差)に関する著書がある大阪府立大教授の森岡正博さん(哲学)に聞いた。(新開真理)
「今年はシャレで(女性にチョコを)渡せるので、新しい関係を築く糸口になるかも。でも(同性に渡す)『友チョコ』も出てしまったし、関係性に基づく売り出しのパターンはこれで出尽くした」。藤本さんはクールな目を向ける。
商品名と「勝つ」「受かる」などの語をかけた「合格祈願菓子」が勢いを増す状況と比べ、「受験は毎年繰り返し、家族を含めて切実だが、恋愛はどうだろう」と分析。「女性は男性と違い、もらった数を競う流れには向かわないだろうし、業界主導のブームは定着しにくい。『逆チョコ』は二、三年もつかどうか…」とみる。
藤本さんは教員になり十六年。「私も同僚も、義理チョコは確実に減った。この五、六年、テレビや雑誌はスイーツに関する情報であふれ、季節や地域限定の『レアもの』商品も増えた。イベントも多くなり、バレンタインは埋没している」と食をめぐる環境の変化を指摘する。
さらに「気持ちを口に出せない女性は少なくなり、メールもある。チョコが言葉代わり-というバレンタインの有用性は減っている」とする。
チョコの消費額が減る中、新たな需要の掘り起こしを試みる菓子メーカーの意図は、どう受け止められているのか。藤本さんの教え子らは「相手に好意がなくても、もらうだけもらう」と、おおむね好意的。「バレンタイン当日だと、ちょっと重い。前日にさりげなく渡してほしい」という意見もあった。
◇
「今までのバレンタインデーは『女性専用車両』みたいなものだった」とみるのは森岡さん。「女性からの告白をはしたないと考える風潮が社会にあり、特別な日として存在した。一方男性も、親しくなりたい女性に自分から物を贈って気持ちを伝えるチャンスがなかった。『逆チョコ』がそういう状況の変化につながるなら、いいこと」と肯定的にとらえる。
その上で「多様な男性がいることが認められ、従来の画一的な男らしさを脱ぎ捨てるきっかけになればいい。男性はまだまだ縛られている」と指摘する。
森岡さんが案じるのは「逆…」の義理チョコ化。「そうなれば単なる贈答で、『もう一つのお中元』になってしまう。互いにコミュニケーションを深める機会にしていくには、義理はなくした方がいい」と助言する。思いを伝える日として浸透させるには、女性が渡すことを前提にした「逆」という呼び名も再考の余地がある、とする。
そして「ホワイトデーを廃止し、バレンタインデーの翌週くらいに『一緒に食べる日』を設ける。受け取った側が前向きなら連絡する、という感じでどうだろう」と提案する。
それなら、物の行き来から一歩、踏み出すきっかけになりそうだ。
■減少続く消費額
森永製菓が昨年末、10-50代の男女計800人を対象に行った調査では、男性の7割が「バレンタインに女性に贈ってもいい」と回答。本命に贈るチョコレートの平均額は1672円、本命以外は600円という結果が出た。日本チョコレート・ココア協会によると、チョコの国内消費額は2001年度以降、減少が続く。ピークの1991年度(4684億円)に比べ、05年度は94%。
(2/6 11:33)
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