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【主張】ネット中傷摘発 行き過ぎは犯罪と自覚を
インターネットのタレントのブログに「人殺し」などと事実無根の書き込みをしたとして警視庁は名誉棄損容疑で男女18人を書類送検する。「殺してやる」などと特に悪質だった20代の女はすでに脅迫容疑で書類送検されている。
ネット上では目に余る誹謗(ひぼう)中傷が少なくない。互いの顔を見ずに匿名で参加できるネットには悪意の表現が安易に書かれやすい。
しかし時として、それが気づかぬうちに人を傷つける。そのことを自覚することが大切だ。今回の摘発を警鐘とし、ネットの健全な活用につなげたい。
今回のケースでは、タレントが過去の殺人事件に関与したというデタラメなうわさ話が広がり、それに不用意に便乗した悪意のコメントが氾濫(はんらん)した。送検されるのは昨年、そうした中傷を書き込んだとされる17〜45歳、女子高生や国立大職員ら職業もさまざまだ。
互いの面識はなさそうだが、なかには、「(本当に)殺人犯と思いこんでしまった」と供述している者もいるという。
ブログはネット上の日記形式のページで、閲覧者が自由に感想などを書き込める。そこに多くの人たちとの意見交換の場としての楽しさがあるが、一方で常に、落とし穴が潜んでいることを念頭に置き、自制する必要がある。
自衛策として、根も葉もない中傷などは気にしない方がいいという意見もある。しかしうわさ話がエスカレートして、顔写真や住所などまでが書き込まれ、身の危険も感じるような極めて悪質なケースさえある。表現の行き過ぎは犯罪になることを肝に銘じたい。
警察当局は従来、「殺す」の表現が殺人予告として脅迫容疑などで摘発してきたが、名誉棄損での一斉摘発は異例だ。表現の自由とからみ、書き込み内容の線引きは難しい。警察は今回のケースによって立件の判断基準を示し、今後に生かしてほしい。
ネット情報は、サイトの運営管理者らの責任について業界団体がガイドラインを作成し、書き込みの削除やサイトの閉鎖措置を含むルール作りが始まっている。また、多くの人の目に触れるネットの特性から、行き過ぎた中傷や批判には歯止めがかかる自浄作用に期待する声もある。
いずれにせよ、闊達(かったつ)な情報交換ができるネットの魅力を失わないよう恒常的努力が求められる。