朝から重たい話になるが、日本のトップリーダーたる首相に必要な資質は何か。過去の首相の指導力などを評価した「総理の通信簿 歴代宰相の器を問う」(細川隆一郎著)によると、首相の条件は深沈厚重な人物であることだとする。
つまり、落ち着いていて重みがあり、信頼のおける人でないと駄目だという。加えて、もし間違いに気付いたら大転換する勇気も求める。同感である。
翻って麻生太郎首相はどうだろう。郵政民営化のあり方について、四分社化された経営形態を見直す必要性があるとの認識を表明した。政策を転換する勇気を示した形だ。
ただ同時に麻生首相は、郵政民営化を決めた小泉内閣で総務相だったことに関し「内閣の一員として最終的に賛成したが、郵政民営化は賛成ではなかった」と明言した。これは「今さら何を」と言わざるを得ない。
郵政民営化を最大の争点にした前回の総選挙で与党は圧勝した。麻生首相はその時に獲得した議席の恩恵を受けている。勝因に反するような考えは、自らの政権基盤を否定するに等しい。
さらに定額給付金問題では、本人の受け取りについて発言が定まらず、混乱は収まらない。影響を深く考えず、場当たり的に持論を展開する人なのかもしれない。深沈厚重を期待するのは無理なようだ。