〜元動労のNTT社員らが、個人情報を革マルに流す!〜

 平成11年(1999年)11月、警視庁公安部は業務上知り得た顧客データを革マル派に提供した容疑で、NTTとNTTドコモの社員2名を窃盗及び電気通信事業法違反で逮捕した。当日のテレビや夕刊各紙は、勤務箇所から顧客情報を窃盗して革マル派活動家に提供していたという容疑で、NTT東日本とNTTドコモの社員各1名が、同日、 警視庁公安部の手によって逮捕されたことを大きく報じた。その後の調べでは、五十嵐栄容疑者は、元国鉄東神奈川電車区出身で当時の所属組合は「動労」、また、山本武容疑者は、元国鉄大宮機関区で所属組合は同じく「動労」であったことが判明している。

 2001年12月、検察側の論告求刑が行われた。求刑は山本被告に対して懲役4年、五十嵐被告に対しては懲役3年。検察側論告はきわめて厳しいものであった。今回の犯罪は革マル派による計画的犯行である。NTTの信用にとどまらず、国民の通信に対する信頼を犯す行為であり、社会的にも責任は非常に重い。重要な個人情報が革マル派に知られることは由々しき事態である。通信の機密保持を犯す行為は、現代の情報社会に大きな不安をもたらすものであり、その責任は非常に重い。なお、本事件は、2月8日、第23回の公判が開かれ、論告求刑に対する最終弁論が行われた結果、4月30日、被告全員に「有罪」(執行猶予付き)の判決が下された。そして、控訴期限である5月13日までに控訴手続きがなかったため、判決は確定した。

 国鉄改革は、時の政権が命運を賭けて推進したもので、最大の難問「雇用問題」では全官公庁が協力体制を取った。地方自治体もまた然りである。NTT等革マル社員2名の逮捕事件の発生を知って愕然としたのは、「もしや国鉄改革の裏面で革マル派の官公庁への拡散があったのではないか!?」という想いからである。この事件は安易に看過すべきでない事件である。国鉄時代は無名、ごく普通の労働組合員と見られていた者が、十数年後に突如バリバリの革マル派活動家として姿を現すとは尋常ではない。この「NTT等革マル社員2名の逮捕事件」もまた、革マル派お得意の「潜り込み戦術」が露呈したものと考えられる。国鉄改革と国家的規模の雇用対策、その裏で巧妙に画策され、進展した公的部門への革マル派活動家の拡散!?そこに「国鉄改革を好機と捉えた革マル派の一世一代の大戦略」が絶対に無かったとは言えないのではないか。国鉄改革では鉄道公安官など、国鉄職員が警察へも多数採用して戴いている。この事件の背景に危機感を持たない者の方がおかしいと言わざるを得ない。警察革マル活動家とNTT革マル活動家が共謀・共闘したらどのような違法行為でも容易に遂行できることになるのではないか。まさかとは思うが、想像するだにぞっとする話である。
<本書p.51〜54> (「もう一つの未完の国鉄改革」抜粋)