ドラゴンエイジPure誌掲載の読みきり作品「シンデレラシューズ」の全頁解説第9回です。
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これ以上ないほどに、果てしなくネタばれなので
必ず本編を読んだあとで読みすすめてください。
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■p30(p176)
最初はグローブ座にしようと思っていたんですが
19世紀にはなかったそうなのでロイヤルオペラハウスに変更しました。
しかし、このオペラ座も空襲で焼け落ちたり改築されたりで色々なバージョンがあるそうで
調べて描くのに苦労していました。僕ではなくアシスタントの方が。
人に描いて貰えるってスバラシイ。
ナレーションはプラトンの「饗宴」をもとに物語調にしました。
男女のヘテロだけでなくレズビアンやゲイのカップルまで含んだ形なので
自らの半身を求める愛の起源を説明するものとして広く援用される一説です
「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」というミュージカル・映画では
The Origin Of Loveという曲の歌詞として引用されています。
映画は役者もストーリーも美術もかなり強烈で、楽曲も文句なしにすばらしかったです。お勧めの傑作。
■p31(p177)
このページは上のアンドロギュヌス(両性具有)と飾罫はアナログからのスキャンで
他は液晶タブレットで一から描き起こしました。
言い訳がましいですが、時間が逼迫しているときに新しいことやろうとするもんじゃないですね。
勝手がわからず、えらく苦労しました。木版の宗教画っぽくしたかったんですが、なんか、かなりイマイチ。
下の人物群はまあまあですが、上のオーナメントは素材集の流用なんですがあんまりしっくり来ないので
それを含めて他は描き直したいなあ…。
3つの性(男男、男女、女女)なんで、
本当は上部の男女のほかにも二つあるわけですが、ゼウスの雷で引き裂かれる前と後
上と下で対応関係にしたかったのでこうなりました。
■p32(p178)
引き続き、本作品のメインテーマとなる愛の起源についての説明シーンを劇中劇で表現。
朝霧でもやりましたが、こういう舞台をつかった演出は考えててとても楽しいです。
好きな割りに、あんまり舞台には足を運んでないんですが、結構ぎょっとする演出があって勉強になります。
やっぱり漫画家は漫画アニメ以外から、いろいろ吸収した方が芸に幅がでるような気がします。
漫画・アニメをまったく読まない見ないのも問題でしょうけど。
■p33(p179)
君の半身こそ自分だと口説くシーン。
3コマ目のアマリはちょっと間抜けな顔になってしまいました。
多分眼の左右の大きさがマズイのとハイライト位置が問題。
眼のハイライトは光源とは関係なしに、視線の向きや見映えで決めるべきなんですが
苦手でなかなかうまくいかないです。
■p34(p180)
キスシーン。最初の案では2pではなく1Pで、
一番目のコマをほぼシルエットで見せるだけの簡素なものでした。
アマリの願望が叶うシーンなので大きく見せましょうという編集の要請だったので、がんばってみました。
自分は漫画の登場人物とはいえ一番プライベートなシーンをカメラでべったり接写する、というのは
なんとなく抵抗があるんで、なんとか間接的な感じに持って行こうとしてしまいます。
漫画の展開的に華が要るというのもわかるんですが、
あんまり感情移入できない男に”ヒロイン”の唇が奪われるシーンを見せても
読者的にどうなんだろう、という疑問もあるので、難しいところです。
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