海上保安庁は1月26日、昨年1年間に行われた密輸・密航取り締まりに関するレポートを発表した。密航については、密航を手引きした人物の摘発が過去5年で最多を記録。レポートは、密航が「小口化・巧妙化が進んでいる」と指摘している。また、国際的な密航斡旋組織の韓国人首謀者が国際手配されたことも明らかになった。(溝口恭平)
昨年、海保が単独または警察などと合同で摘発した薬物の密輸事件は21件。11月には、約300キログラムの覚せい剤密輸が発覚した。銃器の摘発は1件だった。
海保によると、昨年摘発された薬物・銃器密輸の約6割にロシア人船員が関わっていた。過去5年間の統計を見ても、全体の半数以上、年によっては9割近くの密輸にロシア人船員が関わっていたこともあり、海保は「ロシア人船員による犯行には十分な警戒が必要である」としている。
密航については、船員に成りすまして少人数を上陸させる方法が目立っているという。かつては密航者をコンテナや船内の隠し部屋などに潜ませて大量に移送するのが主流だったが、報酬の支払方法が、日本に定着した際に約束金の半分を支払うといった形に変わりつつあるため、少人数でより発覚しにくい方法がとられているという。
海保関係者によると、密航者がブローカーに支払う金額は平均で100万円ほど。偽造の外国人登録証や住居を用意するなどの“オプション”がつくと、数百万円に跳ね上がることもある。
昨年5月に山口県で摘発された貨物船「EVER MASAN」(E号)を利用した韓国人の密航事件では、他人の乗員上陸許可証を利用して、不法出入国をしていたことが明らかになった。
一般的に外国籍の船員が日本に上陸する場合、船長が代理店などを通じて入管に上陸許可証の発行を求める。上陸許可証があれば一定期間内、入港地周辺に限って買い物などの活動が許される。
ところが上陸許可証には顔写真がなく、海運会社と共謀すれば正規の船員に成りすまして日本に上陸することが可能になる。パスポートに当たる船員手帳には顔写真が貼られているが、上陸の際に提示を義務付ける法律はなく、立法化の動きも見えていない。
E号事件では、正規の上陸許可証で密入国者を上陸させた後、別の密航者にその上陸許可証を渡し、出港の際に上陸時の人数と合うように偽装していた。海保はE号事件に関わった韓国人首謀者を国際手配している。 |