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「ゲーム脳」や「ケータイ脳」という話題のあとで、「メール脳」の話題。
こんなことばかり書いていると、本気と冗談の区別がつかなくなってしまいそうだが。 (^^);
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「ケータイでメールばかり使っていると、頭が痴呆老人と同じようになる」という説は、ネットで見つけた。引用すると、次の通り。(いずれも孫引き。)
携帯電話でメールを多用する中高生の脳波が痴呆のお年寄りと似た状態になっていたという。中高生たちは、教科書を10分間以上集中して読めず、簡単な漢字が思い出せないなどの傾向があったとしている。──
( → http://blogs.yahoo.co.jp/warabidani/54031721.html )
痴呆のような『メール脳』 中高生の脳波調査 森・日大教授が指摘。
それによると、全体の 60%にβ波の低下が見られ、ゲーム脳と同等かそれ以上にひどい若者が目立ったという。β波の低下している中高生には、教科書を十分間以上集中して読めない、簡単な漢字が思い出せない、忘れ物が多いなどの傾向があった。
( → http://diu.cocolog-nifty.com/imode/2004/10/post_2.html )
森・日大教授というのは、「ゲーム脳」というのを真顔で語って、トンデモ扱いされた人。それでも懲りずに、「メール脳」というのを語り出したわけだ。
なお、後者のリンクで示されているが、彼は「メール脳はお手玉で治る」と主張して、失笑を買っているようだ。(別のところでも示されているが。)
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本気と冗談の区別がつかなくなると困るので、真面目に語ろう。誤りを指摘すると、次の通り。
(1) 「メール脳」というのは、冗談でなら成立するが、本気では成立しない。つまり、「メールのせいで脳の機能が偏る」ということはあるが、「メールのせいで脳の生理構造が変化する」ということはない。
(2) α波だの、β波だのは、脳の能力とは全然関係ない。「β波がこれこれだから、痴呆老人と同じだ」というのは、珍説に近い。「若者も、老人も、どちらも米を食べる。だから、米を食べると、痴呆になる」というような珍説。デタラメの極み。(β波なんて、誰でも、増えたり減ったりする。能力の尺度にはならない。)
(3) お手玉で痴呆が治るなんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。メールを多用する若者だって、それでメール依存症が治るわけがない。そもそも、当の教授の見解に従えば、メール多様者は親指機能をたくさん使うから、脳が活性化されて、頭がよくなっているはずだ。 (^^); あるいは、「ブラインドタッチを多用すると、頭がよくなる」というようなもの。
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以上は、どこが間違っているか、という話。では、正しくはどうか? 次の通り。
(A) メールの多用は、脳の生理構造を変化させることはない。だが、脳の機能を偏らせる、ということはある。まともに学習すればまともな人間になれるのに、メールばかりしているせいで偏った人格になる、ということはある。
(B) まともな人間になるように、まともな脳を形成するには、どうするか? 「頭を使うこと」が大事だ。ただし、お手玉なんかやったって、駄目だ。手先を動かして頭がよくなるなら、動物はみんな人間並みに頭がよくなっているはずだ。……人間がやるべきことは、「考えること」だ。特に、「自分の頭で考えること」だ。
つまり、お手玉だけなら猿にもできるが、「自分の頭で考えること」は猿にはできにくい。これこそ大切なことなのだ。
だからこそ、「自分の頭で考えること」を、私はこれまで、手を変え品を変え、強調してきた。
→ カテゴリ「思考法」
→ カテゴリ「科学トピック」
(例。「ケペル先生の教え」など。)
ここで結論を簡単に言うと、次の通り。
「自分の頭で考えること」として、最も好ましいのは、「読書して考える」ことだ。他の知識を吸収しながら、単に覚えるだけでなく、考えながら覚える。「どこに書いてあることはどのように当てはまるか」ということを、自分の頭で考える。
[ 付記 ]
ただし、「自分の頭で考えることが大切だ」と私が語ると、「そんなことを言うやつはトンデモだ!」と語るトンデモマニアがいっぱい襲いかかってくるだろう。メール脳のせい? (^^);