【ダボス(スイス東部)澤田克己、エルサレム高橋宗男】不発弾が市民を殺傷しているクラスター爆弾について、国連のホームズ人道問題調整官(事務次長)は、イスラエル軍が昨年末からパレスチナ自治区ガザ地区を攻撃した際「使用しなかったようだ」と述べた。非政府組織(NGO)の専門家も現地調査から「使っていない」との見解を示した。
狭いガザ地区で不発弾が自軍兵士を殺傷するのを避けたとの見方や、昨年、締結されたクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)を意識して使用をやめたとの見方も出ている。
スイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で29日に行われた事務次長の会見によると、ガザ地区全域で人道支援などを展開する国連の現地調査では、クラスター爆弾の不発弾は見つかっていない。
次長は06年の第2次レバノン戦争でイスラエル軍が大量のクラスター爆弾を使用し、子爆弾で推定100万発の不発弾が残されたレバノン南部と比較。レバノンでは「不発弾処理が現在も大きな課題として残る」のに比べ、今回のガザ攻撃では「クラスター爆弾が使われていないので、不発弾の問題は比較にならない(ほど少ない)」と述べた。
一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチの上級軍事アナリスト、マーク・ガラスコ氏は毎日新聞に「今回の攻撃では使用された痕跡はない」と述べた。同氏はその理由として、使用を禁じるオスロ条約に95もの国が署名したことから、非加盟のイスラエルにも「国際的な政治的圧力が働いた」点を挙げた。また、空爆後の地上侵攻を想定すれば、市街地に不発弾が残り、イスラエル兵が死傷する可能性があり、それを避けようとしたとみられるという。
イスラエル政府はクラスター爆弾の使用については言及していない。ただ、国連に対しては「(国際的に)禁止されている兵器は使っていない」と説明している。
今年1月にAP通信が報じたところによると、ブッシュ前米政権と協議したワシントン在勤のイスラエル政府当局者は「ガザでクラスター爆弾を使う計画はない」と述べた。ブッシュ政権は、米国製のクラスター爆弾が第2次レバノン戦争で不適切に使用されたとの懸念を抱いていたため、イスラエル側と協議したとみられる。
クラスター爆弾の製造、使用、保有を禁じ、被害者支援や不発弾処理を定めた条約。ノルウェーなど有志国やNGO主導の軍縮交渉「オスロ・プロセス」が07年に締結運動を開始。昨年12月、オスロで開かれた署名式で英独仏や日本が署名。署名国は95、批准済みは4。30カ国の批准後、約半年で発効する。米露中は参加していない。
毎日新聞 2009年1月31日 18時44分
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