総務省消防庁が、救急患者受け入れ拒否問題の改善に向け、患者の容体に応じた搬送先の医療機関リストを盛り込んだ「搬送・受け入れ基準」策定を都道府県に義務付ける方針を有識者検討会で示し、了承された。消防法改正案に盛り込み、今国会への提出を目指すという。
搬送先リストには、心肺停止状態なら救命救急センター、重症の脳疾患はA病院といった具合に症状や程度に応じた具体的な医療機関名を載せる。基準では、救急隊員がリストの中から搬送先を選ぶ際のルールや、搬送先が決まらない場合の最終的な受け入れ先を当番制で確保するなどの方策を定める。
救急隊員の円滑な搬送先選択や救命救急センターなど一部医療機関への急患集中回避に役立ち、たらい回しの発生を抑制できる有効な策ではないか。
基準策定は都道府県ごとに設けられる医師や消防関係者、有識者らによる協議会が担当。基準に従って市町村の消防本部が業務に当たる。救急搬送の件数や病院の数は、地域によって大きく異なる。リストや基準づくり具体化の段階で、実情に合わせたきめ細かい配慮が大切なことはいうまでもない。
救急患者受け入れ拒否問題では各地の自治体も独自に改善に取り組んでいる。東京都は、救急隊に代わって地域の病院同士が協力して受け入れ先を探す制度を近く始める。札幌市は既に夜間急病センターに患者受け入れ情報オペレーターを配置するなどの対策を始めている。
消防庁の調査では救急隊が三回以上受け入れを拒否されたケースは二〇〇七年、全国で約二万四千件に上る。今年一月にも交通事故に遭った兵庫県の男性が十四病院で断られ、亡くなった。関係機関の一層の協力と工夫で、悲劇をなくしたい。