都道府県の医療計画策定の基礎となる2次医療圏のうち、病院勤務医1人が扱う分娩(ぶんべん)数が年150件を超す医療圏が3割を占めることが毎日新聞の調査で分かった。日本産科婦人科学会などは帝王切開などリスクを伴う分娩を受け入れる病院勤務医が無理なく扱えるのは150件程度までとしている。地域のお産環境が危ういバランスで成り立っている実態がうかがえる。【まとめ・大和田香織】
調査は厚生労働省が07年12月時点で集計した355医療圏(兵庫県は周産期医療圏)ごとの分娩数、常勤産科医数を都道府県に照会し、取材を加味してまとめた。
有効な数値を得られた287医療圏を分析すると、63%の182医療圏で医師1人当たり分娩数が100件を超え、30%の87医療圏で150件を超えていた。
都道府県別では北海道(7医療圏)▽神奈川県(6医療圏)▽長野県(同)▽愛知県(5医療圏)▽京都府(同)などで、150件を超すケースが目立った。富良野(北海道)、湯沢・雄勝(秋田)の両医療圏は、一つしかない病院の常勤医1人で分娩数が年150件を超えた。
今年1月までの1年間で、経営判断や医師不足などで分娩予約の受け付けを中止したり、産科の休止に至った病院は14府県17カ所に上ることも、今回の調査で分かった。
産科医の増加はすぐには望めない。限られた医療資源を最大限に生かすため、通院時間や交通網、地域の実情に合った医療圏の見直し等も含め改革方法を探るべき時だ。
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■ことば
医療法で定められた区域で、特殊医療を除く入院医療を扱う病院と複数の診療所で構成される。地域の一体性などを踏まえ、都道府県が3~21医療圏を設定しているが、医師不足などを理由に統合や機能分化などの再編が進んでいる。
毎日新聞 2009年2月7日 東京朝刊