DAY


11月18日(木)「ラザロブルク物語@ ドヴェルチェク村の嫁入り。そして、あしか」

 真っ黒くて大きなあしかの背中にしがみつきながら、尾根を見下ろした。そ こには湖が広がっていて、一匹の首長竜が水を飲んでいる。ラーラはあしかに 言った。
「ねえ、あしかポン」
 あしかは聞いてないかのようにそのまま歩き続け、しばらくしてから立ち止 まると、後ろを振り向いた。真っ黒な顔の下で大きな口が笑っているように見 える。
「な・ん・だ・い?」
「恐竜がいるよ」
 ラーラが首長竜を指さすと、それはずしんずしんと凄まじい地響きをあげて、 自分の住処へ帰ってゆくところだった。あしかも頷いた。
「そ・う・だ・ね」
 あしかは別に勿体ぶっているわけではない。あしかはいつだってテンポが遅 いのだ。あしかに道を尋ねたりしたら、30分くらいは平気で考えていたりす る。喩えそのあしかがあたりの地理なんて何も知らないとしても。こっちが急 いでいようが何だろうが、とりあえず考えるのがあしかというものだ。だいたい、 あしかは一般的にあまり頭が良くないので、自分が何を考えていたかというこ とさえすぐに忘れてしまう。そうして、我々はわけもわからず首を捻っている あしかの前で途方に暮れるわけだ。あしかに訊くなかれ。
 こんなあしかに乗って山を越えるなんてとんでもないことだった。けれど、 これがラーラの村ドヴェルチェクのしきたりなのである。男の子が絶対に産ま れないドヴェルチェクでは娘達はあしかの背に乗って山向こうの村レスコフへ お嫁に行くのが村の決まりだった。そして、レスコフもまた女の子が絶対に産 まれない村で、次男はダチョウに乗ってドヴェルチェクへ婿にやって来る。つ まり、ドヴェルチェクとレスコフは互いの存在なしには存続できなかった。
 けれども、ドヴェルチェクからレスコフへ娘達を運ぶ貴重な役目を担ったあ しかはもはやドヴェルチェクの外れに住むこの一匹だけだった。近頃は あしかもみんな都会へと出ていってしまう。そして、この一匹も年老いていた。 普段は近所の主婦から魚をもらって囓り、あとは広場のベンチでひなたぼ っこをしているばかりのこのあしかがドヴェルチェクとレスコフを繋ぐ大切な 儀式を担っているのである。
 ドヴェルチェクとレスコフのちょうど真ん中にある峠の茶屋が見えた。煉瓦 造りの小さな小屋である。お茶や簡単な食べ物を摂ることができる。あしかは 疲れているようだ。ラーラはあしかに言った。
「あしかポン、休もう」
 あしかは茶屋を通り過ぎる頃になって、突然立ち止まり、「そ・う・だ・ね」 と言った。ラーラがあしかの背中から降りると、あしかはよほど疲れていたの か、茶屋の外のベンチに腹這いになった。茶屋の老婆が顔を出し、ラーラはい わしで作ったピロシキを買った。
「あしかポン、食べなよ」
「そ・う・だ・ね」
 ラーラがピロシキを渡すと、あしかははむはむと食べた。山の空気は刺すよ うに冷たい。あしかの黒い体の周りにピロシキの白い湯気が漂う。老婆がラー ラに話しかけた。
「お嫁に行くんだね」
「そうだよ」
「あんたは優しい子だね」老婆はピロシキにかぶりついているあしかをちらっ と見た。
「おばさん、ずっとここに住んでいるの?」
「そうだよ。もうずっと前から。あんたのようなドヴェルチェクのお嫁さんを たくさん見てきたよ」
「あしかポンのことも?」
「もちろん。昔はもっと元気だった。川遊びが好きだったから、一緒に遊んだ りもしたよ。ピロシキを狙うから、枝で追い払ったりもしたね」
「あしかポンが泥棒を?」
「お腹が減ってたんだろう。かわいそうなことをしたよ。私も今よりは少しだ け若かった。今じゃお互いすっかりよぼよぼ。あんたを 乗せるだけではあはあ言ってるじゃないか」
 ラーラはあしかを見た。ピロシキを食べ終わって、目をぐっとつむったまま 横たわっているあしかは急に年老いて見えた。ぼろきれのような鰭がみすぼら しい。ラーラも物心ついた頃から、こ のあしかのことはよく知っている。でも、どういうわけか話したり遊んだこと は一度もなかったのだ。ラーラだけではなく、村の人達はあしかをいじめるで もなくかわいがるでもなく、ただ無関心に村に置いていた。そうして、村の誰 かがお嫁に行くときだけ、わすかばかりの金や適当な食い物と引き替えに、娘 を6キロ離れた隣町へ運んでもらうのである。正装を着た娘を背にずりずり 山を登っていく時は村のみんなが見送るのが常だ。しかし、あしかが1人で戻 ってくる時には誰一人声をかけることもない。あしかが帰ってきたことに気が つきもしない。
「もうそろそろこれも限界だろう。でも、他のあしかを探すのは難しいだろう ね」
「あしかポン、もうダメなの?」
 口にしてから、急にドキッとした。14歳のラーラには幼い頃から家の近所 で見慣れたあしかがダメになりかけているということがよくわからなかった。
「大丈夫だよ。あんたをレスコフに届けて、ドヴェルチェクに帰るだけの力は 残っているだろう。そろそろ最後の旅かなと言っているだけさ。私もこれが来 なくなるのは寂しいよ。これ、あしか!」
 あしかはむっくり首をもたげた。「な・ん・だ・い?」
「帰りも寄んな。ピロシキ、あげるから」
「あ・り・が・と・う」
 再び旅が始まった。けれど、ラーラはあしかの背に乗りたくないと言った。 もうあしかを疲れさせたくなかった。すると、あしかは言った。
「僕に・乗ら・ないと・幸せ・に・なれ・ないよ」
「幸せなんかなりたくない」
「なら・ないと・ダメ・だよ」
「幸せなんて嫌い」
「ダ・メ・だ・よ」
「嫌だ。あたし、結婚しない。あしかポンと村に帰る。毎日あしかポン と川遊びする。家で仕事もする。あたし、今まで一度もあしかポンに優しくしてあげなかった。 今まで何ひとつ人のためにしてあげなかった。今まで自分のことばかり考えていた…」
 ラーラは自分の目に涙が溢れていることに気づいて、自分でびっくりし、そ うなるともう涙は止まらなかった。あしかの背中にすがりついて泣いた。あし かは困ったような顔をして、ラーラの顔に髭面を寄せた。
「変わ・らない・もの・何も・ない・んだよ」
「変わりたくない」
「わ・か・る・よ」あしかはラーラの涙を長い舌で嘗めた。
「僕は・ラーラ・ずっと・忘れ・ないよ」
「何もしてあげなかったのに」
「君が・生まれた・日・覚え・てる・から」
 この時間が永遠に続けばいいと思った。あたりは暗くなりかけ、あしかは進 んでいく。麓にレスコフの村の灯りが見えた。ラーラとあしかは時間を惜しん で昔の話をした。ラーラが忘れていたいろいろなことが急に甦る。河で遊ぶ あしかを見て、声を上げて喜んだ幼い頃のラーラ。寝ているあしかに忍び寄っ ては、しっぽを引っ張ったラーラ。なぜ、こんなに大切なことを今まで忘れて いられたのだろう。
 村の灯りが大きくなってくる。ラーラはあしかに言った。
「ねえ、あしかポン」
「な・ん・だ・い?」
「もし結婚がうまくいかなかったら」
「う・ま・く・いく・よ」
「それでも、うまくいかなかったら。私をまた迎えに来てくれる?」
「迎え・に・来る・よ」
「そうしたら、また河で遊ぼうね」
「い・い・よ」
 結婚相手は感じの良い青年だった。彼と彼の両親が村の入口でラーラを出迎 えた。ラーラは真っ赤な目をして、あしかに抱きついた。
「気をつけてね」
「そ・う・だ・ね」
「さっきの、約束だよ」
「い・い・よ」
「約束って?」青年が訊くと、ラーラは「ううん」と首を振り、その時にはも うあしかは山の方へ戻っていくところだった。「あしかポン!」ラーラが呼ぶ と、あしかは少し振り返ったけれど、立ち止まらなかった。ラーラはそれをじっと 見送った。あしかの黒い背中が夜の闇の中にすうっと溶けるように消えた。

11月17日(水)「読書・妄想」

読書習慣
 通勤列車では、本を読むか、英語を聴いています。 今、読んでいるのは、村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」。88年に新刊で 出た時、すぐに買いました。あの頃は大学もろくに行かず、朝から国立駅近くの 喫茶店に行って、モーニングを食べながら、本を読んでいたり。巻末の「一九八 八年一○月二四日 第一刷発行」という記述を見て、月並みながら、あれから1 1年たったのかという驚きのような感慨を覚えます。
 この作品は、執筆されたのは88年頃ですが、作品の舞台は83年なんですね。 83年と言えば、バブルの入り口あたり。そして、作者が実際に執筆していた8 9年あたりはまさにバブルの絶頂期なわけで、それをこの作品では、「高度資本 主義社会」「経費」といったキーワードで表現しています。本来「働くこと」と 「金を得ること」という密接な因果で結ばれるべきことが乖離してしまった時代 の空気を村上春樹なりに捉えようとしていたんでしょうね。ご存じのように、 我々はこの数年後、この小説の中でアウト・オブ・デイトとされた旧来のシステ ムの報復を受けるわけで、あの歴史的にも希有な時代を捉えようとする文学があ まり他に見あたらないことも考えると、これはこれで貴重な小説と呼ぶべきかも しれません。村上春樹本人も「ノルウェイの森」のブレイクの直後という、いわ ば作家としての最盛期にあり、乗りに乗った勢いが雑音となっている点を差し引 いても、なかなか面白い作品だと思います。説教臭さだけはちょっと勘弁してほ しいけど。
 一大ベストセラーになった「ノルウェイの森」は今でも大好きな小説ですが、 地味な作品である「国境の南、太陽の西」が読み返すたびに自分の中でポイント を上げています。初めて読んだ時はつまらないと思ったんですけどね。たとえば 不倫でも何でも、してみないとわからなかったことは確かにあるわけで。そこで、 「知らない方が良いことは知らないでおく」か「たとえ傷ついても知るべきこと を知る」か、人生観の問題になってくるわけです。「国境の南、太陽の西」を初 めて読んだときはまだ家庭教師を勤めながらノンキな恋愛をしていた頃で、2度 目に読んだときは、不義を重ねてヘトヘトな時期だったわけで、それだけで受け 取り方が違ったのでしょう。「国境の南、太陽の西」は若いうちはわからない大 人の作品ってところ。もちろん一生わからない方もいると思いますが。
 私は村上春樹の小説はほとんどすべて読んでいます。私の読書の幅は広くあり ません。その代わりに、気に入った作家を徹底的に読みます。ドストエフスキー などは初期の短編なども含めて全作品を4、5度繰り返して読み、ポーもほぼ完 読、ファンタジー作家のラヴクラフトやジョナサン・キャロルも全作品読みまし た。他には、梶井基次郎、井伏鱒二なんかが好きです。映画やプロレスなど、現 実逃避の類は何でも好きですけど、やはり本が一番ってことで。

妄想習慣
 妄想が頭に蔓延っています。一度何かを思いつくと、 話がどんどん発展していき、やめられなくなって、心が幽体離脱。通勤の間だろ うが、ハンドルを握っている時だろうが、別世界へ行ってしまい、かなり危険っ て言うか。その妄想のひとつひとつが文に書いて欲しがっているようで、頭の中 で行列を作っている状態にあり、日に日に行列が長くなっていることもあって、 番号でも付けないと整理ができません。わけのわからない物語が増えると思いま すが、我慢できる方は読んでください、ぜひ。
 やっと順番が巡ってきたのが、少女があしかの背に乗って山を越え、隣の村へお嫁に 行く話。考えたのが3週間ほど前なので、色褪せかけています。次に待っ ているのが、りんごを投げつけてくる頭のおかしい自分の兄の話。本当は僕には兄はい ませんよ。今日もまた妄 想してました。有名人に突進するデブなミーハー女の話。ヒロスエの目が潰れる んです。列の一番後ろに並んでいるみたい。

ネット習慣
「ぬいぐるみの熊も胸を焦がして待ち焦がれているようです。」
「さて私の公認凶器ですが、ソーセージやベーコンを少しだけ炒めたい時とかとても便利です。」
「恐ろしく昔のことでまだ湖に恐竜がいたような頃ですが、」
 
さくららんさん のユーモアって品があって、とてもステキです。ディスプレイの前でしばしばクスッと。 カリスマが落ち目になっても、次代のスターってちゃんと現れるのね。

11月14日(日)「週末の出来事」

●モヒモヒ君
 今回の週末には期待していなかった。土曜日は同僚の家の通夜を手伝うこと になり、日曜日は妹が引っ越すので荷物運びをしなければならなかったわけで。 たまには用事で潰れる週末も悪くない。金曜日の夜はどこにも寄らずに家に帰 ると、すっかり諦めてテレビを眺めていた。
 そんなとき。何年かぶりに高校時代のモヒモヒ君からの電話。ちょっと言葉 を交わしただけで、昔と少しも変わっていないことがわかる。
普通の人は会社とかで苦労して成長するんだけど俺の場合まだ学生やってい るから何も変わらねえ、学校の先生になるつもりなんだけど生徒に辱めを受けて 裸で授業やらされるかもしれねえし、黒板に字を書いているとお尻の肉がプリ プリ震えたりさて皆さんって振り返るとチンコが遠心力でプーンって回って一 度外側に飛びだした物は重力の作用でペタッて落ちるわけでそういうのを生徒 に見られるのはとても恥ずかしい、そんなことを考えると勃起してしまう
 本当に全然変わっていない。僕がまだ学生だった頃、モヒモヒ君とは何をするこ ともなく会って、真夜中のファミリーレストランで「北斗の拳」の話をしてい たものだった。彼は高校生の頃から無能な人間を自称していたが、エレキベースに関しては今も散発的 に活動しているようで、これだけはまったくプロ並みにうまい。一緒にバンド を組んだこともある。しかしながら、彼の親は売れない陶芸家で生活は厳しく、 彼自身も仕事に恵まれない状況にあるため、今も変わらぬ貧しい身のようだ。 貧乏という言葉はけっこう世間で気軽に使われているようだけど、彼の場合、 冗談でなく生活が困難な状態にあり、僕もかつて何度か彼に金を貸した。累計1 0万円くらい。もちろん返ってこなかったけれど。
 翌日の通夜から帰った後、国立駅でモヒモヒ君と待ち合わせて、5年ぶりに 会った。ちから屋で焼肉を食べる。当然、僕のおごり。上カルビやロースやハラ ミやタン塩や小袋やユッケビビンバを食べた。
俺は昔から無能のナッシングマンを自称していて相変わ らずダメだけど○乙は焼肉に連れてきてくれたり生活には困ってなさそうじゃないか、 俺は普段ご飯の上にふっくら炊いた米をかけて食ってるよ
「それはおかずが何もないということだね」
明治大の通信教育に美人看護婦がいて友達だったんだけ ど2学期から何かよそよそしくなってだんだん露骨に避けられるようになりこ の前訳を訊いたら俺の存在自体に頭に来ているらしい、俺がそばにいると他の 女の子と話しにくいから遠ざけるようにわざと居づらい雰囲気作っていろいろ と意地悪もしたのにあなたがわかってないからいつも邪魔だったと言われ、も っと場の雰囲気を読めるようになりなさいとか説教もされて、その間中俺はず っとあわわわわわわわわと言い続けていたぜ、島田陽子のように綺麗な人なん だけどそれからはすごく薄っぺらな女に見えてね、そういや彼女はいつも人の 悪口ばかり言ってるし子供が嫌いで見ると絞め殺したくなると言うのだけどそ れは看護婦としてちょっとどうなのか
 要約すると、学校で美人看護婦にいじめられたらしい。デニーズに移動して、 お茶とケーキを摂る。無論、僕のおごり。
芥川の河童読んだことあるよな、あれで出産の時にお前 は生まれてきたいかと親が訊いてお腹の子供が僕は父さんの体質を受け継ぎた くないから生まれたくありませんとか答えるシーンがあったけどアレはいいな、 あんな風に訊かれたら俺は生まれてこなかったのに
「でも愚かだから、その時そう訊かれても生まれてしまったんではないか?」
そうだろうな、何かあるかもしれないとかありもしない 希望を夢見て生まれてしまったろうな
「いろいろ選択肢があったように見えるけど、愚か者の人生というのは結局は一 本道なのではないだろうか?」
アハハそれはおかしい、何をやっても結局同じところに 辿り着く、俺はもう自分の人生は捨てて次代に夢を託す、だから教師なんだけど
 橋本にある彼のアパートへ送る。彼のアパートの隣は女子大生ばかりが住む マンションで、夏に窓を全開にしてオナニーしていると、マンションの廊下を 歩く女子大生達が覗いていくとのこと。マア小さい!とか言ってるんだろうな ムカつくぜ、と彼は車を降りた。

●おだちんこ君
 金曜日のモヒモヒ君からの電話の後、テレビを見ていたら、今度はおだちんこ君か ら電話。矢川のジョナサンでお茶を飲む。「今日はちょっと話がありまして」と切り 出したおだちんこ君、来年1月にもアメリカの西海岸へ転勤になるということ だった。
 もともとおだちんこ君は僕なんかとは格違いのところがあって、フランスで 育ち、某一流大学を卒業して、大手電器メーカーに就職、日英仏の3ヵ国語が 話せて、スポーツもできるし、歌もドラムも、テレビゲームだってうまい、常 に何人もの女の子が周りにまとわりついて、後腐れのなさそうなのを選んで順 番にいかせてあげ、そんなこんなで仕事も出来過ぎなので、入社2年目でアメ リカ支社を任されたと言うか。し ばらくプロレスが見れませんねと彼は言うけど、そんなにツキまくっているな らプロレスくらい別に見なくてもいいだろう。今までアメリカには興味がなか ったけれど、おだちんこ君がいるなら、遊びに行くのもいいかも。ディズニー ランド、ユニバーサルスタジオにグランドキャニオン、サンフランシスコ。
「でも、アメリカ支社は上司がきつい人で、大変なんですよ」
 話を聞くと、本当に大変そう。それでも、おだちんこ君は何とかなるだろう。 そういう人なのだ。モヒモヒ君とおだちんこ君。あまりにも対照的な2人に会 って、何かと思うところあった。どっちが良いとか言うのではなく。当たり前 ながら、いろいろな人生があるということで。

●お手伝い
 同僚のKさんのお父様が亡くなられて、通夜の受付をやることになった。 先輩のIさんと並んで座り、皆さんの香典を受け取って、記帳してもらう。こ ういう役回りを務めるのは、今年2度目である。数ヶ月前、室内の係長の家に 不幸があった時にも、駆り出されたわけで。世の中助け合いだし、嫌いじゃな いです、お通夜。できれば、ない方が良いに決まってますが。
 今回の受付はお寺の境内に設けた宝くじ売場みたいなところ。冴え冴えとし た夜の空気の中、黒に身を包んだ女性が門をくぐって歩いて来るのが見えた。 遠目にもANDさんだとわかる。喪服のためか、いつもよりも背が高く見える。 かっこいい。美しい人は喪服を着るとさらに際だつのだ。ドイツ育ちで、あま りにも美しく、仕事もできる、気だても優しいANDさん。昔の恋人にも1人そ ういう子がいたけど、この種のできすぎ君がどういう原理で動作しているのか 不思議ですらある。人間は自分にないものに憧れるということか。他にも見知 った会社の人達が次々と現れ、香典を包んでは、自分の名前を記す。
 受け付けが終わった後、Kさんを励まし、ビールを戴いた。Iさんと帰る。 Iさんは強力な全日本プロレスのファンなので、電車の中では、全日やFMW の話。まだ間に合うと彼は水道橋で降りた。今日は世界最強タッグの開幕戦 ということ。
 今日は妹の引っ越しを手伝って、父と一緒に重いものを運ぶ。せっかく引 っ越し業者にきてもらうのに、できるだけ自分で片づけてしまおうとする父の 昔の人なところが頭に来る。それでも体を動かしていたら、何とか片づき、後 は小金井の自分の部屋に帰ってUFC−Jへ出かけようとしたら、3時試合開始だ った。6時半からだと思い込んでいたのだ。格闘技系とは、どうにも縁がないらしい。
 だから、家でFMWブレーンバスターを見ていましたよ。用事がたくさんあ る週末だったけど、悪くありませんでした。


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天気読み  CINEMA  WRESTLE  E.T.C  BBS