憧れのセレブホテルが「死屍累々」
遂に70%を超える割引宿泊料金まで登場。客足の途絶えた超高級ホテルの運命は?
2009年2月号
「外資系の価格改定が本格化してくると、そのしわ寄せは中下位の国内勢に行く」と前出の有力ホテル幹部は予測する。とりわけ深刻なダメージを受けそうなのが客室数の多い巨艦ホテル。ニューオータニをはじめ、グランドプリンスホテル赤坂、プリンスパークタワー東京(芝)を擁するプリンスホテル系、さらに今回のランキングでは27位となり、表には掲載されていない京王プラザホテル(新宿)などである。
プリンスやオータニは赤字
巨艦ホテルのRev PARを見ると、まずプリンス系はグランドプリンス赤坂が1万5600円、プリンスパークタワーが1万4500円。系列では「最高級」とされるプリンスパークタワーのRev PARが、1泊1万4300円の「カップルプラン」などなりふり構わぬ集客対策を打ち出しているグランドプリンス赤坂のそれを下回るという逆転現象が起きている。最近ではプリンスパークタワーも1泊1万8千円の「リミテッド・バーゲン」などの商品を出し、ディスカウント路線に傾斜。「最高級」の看板が泣いている。
昨年12月19日にプリンスホテルはアイスホッケー「アジア・リーグ」の名門チーム「西武」の廃部を発表。記者会見で渡辺幸弘社長は「経営環境が厳しくチーム継続は難しい」と説明した。実はプリンスホテルはこれに先だって、従来子会社だった球団「西武ライオンズ」を西武鉄道に譲渡することを決め、11月21日のオーナー会議で承認を受けている。「ライオンズの譲渡もアイスホッケーの廃部もプリンスホテルの赤字減らしが狙い」(西武グループ関係者)という。プリンスホテルの08年3月期決算は営業損益▲32億円、経常損益▲100億円のいずれも赤字。09年3月期は「何が何でも黒字転換を」と経営陣はハッパをかけているようだが、パークタワーやグランドプリンス赤坂など主力ホテルの収益状況を見る限り、V字回復は難しそうだ。
一方、ニューオータニのRev PARは1万4500円、ランキング27位の京王プラザは1万4300円(前年同月比1500円減)で苦境にある。オータニは、東京や大阪のホテルの経営母体であるニューオータニ(本社・東京都千代田区)の08年9月中間決算が純損益で▲9億8500万円の赤字。前年同期も4億3千万円の赤字だったが、その額が倍以上になっている。ホテルの収益改善が見込めなければ、隣接するオフィスビル「ガーデンコート」(地上30階建て)の売却など保有不動産の処分を迫られる可能性もあり、メーンバンクのみずほコーポレート銀行の出方が注目される。
つい1年ほど前まで、業界では「東京には圧倒的に世界ブランドの高級ホテルが少ない」といわれ、今年3月にオープンするシャングリ・ラホテル東京(丸の内)を含め、開業ラッシュはまだまだ続くと喧伝されていた。だが、状況は一転。市場は急速に縮小し、08年1~11月累計でトップクラスの外資系ホテルの多くが宿泊部門の収入を前年同期より20~30%も落としている。この先は新設計画の見直しだけでなく、既存ホテルの淘汰が進むとの悲観論さえ出てきた。高級ホテル市場が「死屍累々」と化す日が来るかもしれない。
ホーム > 2009年2月号目次 > ビジネス