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2009年2月7日

 本紙の連載漫画「ヒラリ君」は4コマと決まっているが、今月2日付の、オバマ大統領並みに愛妻と手をつなぐ話は3コマだった

作者の井田さんも「記憶にない」と言うほど珍しかった。4コマ漫画は起承転結で分かりやすい。定型化されて久しいが、最後の「結」が大切なのは言うまでもない。「結論を生かすため、あえて定型を破った」とは、井田さんの弁だ

芸事に「守破離(しゅはり)」の言葉がある。初心者のころは徹底的に型を守る。次に型を破る。つまり崩してみる。やがて型から離れて味わいを深めるという。重要なのは型の精神を忘れないことである。名人も最後はまた型に戻るという

「打撃の職人」と呼ばれたプロ野球の山内一弘さんが亡くなり、往年の見事な内角打ちを思い出した。職人らしく型を守った打者だった。「守」にこだわり「破」「離」に行く気配のない頑固な打法に見え、そこがまた渋くて好感がもてた

井田さんや山内さんら、名人のこだわりと柔軟性には教えられるところが大きい。起承転結をバカの一つ覚えのように繰り返し、「結」の定まらない時鐘子などなおさらだ。


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