東近江市には市立病院が二つある。元の能登川町立病院と蒲生町立病院で、合併により市が二つを抱えることになった。しかし、社会問題になっている公立病院の医師不足がここでも顕在化した。特に能登川病院では、常勤医師が05年まで14人いたのが、昨年は半数以下の6人に。蒲生病院も、13人だったのが10人になった。
市は昨年1月、市立病院整備委員会を立ち上げた。小鳥輝男・市医師会長や中条忍・能登川病院長(現・事業管理者兼院長)ら18人が委員となり、対策を練った。昨年11月、市に中間報告を提出したが、目まぐるしく変わる医療情勢の中、医師確保の見通しなしに具体的な構想は描けないとして、2病院を当面維持する方向の結論にとどまった。
能登川病院では、06年から大学による医師引き上げや退職が出始めた。最初は内科、翌年は外科で医師が減り始め、昨年は、整形外科、小児科、眼科で医師ゼロとなり、非常勤医師26人でやりくりする事態になった。
04年ごろまで約85%で推移していた病床利用率は、医師不足で患者を受け入れきれず、07年には約62%に。外来、入院ともに患者が減り、昨年は16億円の赤字となった。
蒲生病院では、3年間で3人減っただけだが、07年に整形外科の医師がゼロとなり、70~80%で推移していた病床利用率が約49%に低下した。
市は昨年10月、医師確保のため、3年以上の勤務を条件に新規採用医師に最大500万円の支度金を支給する「医師就業支度金制度」を設けた。
また、今年1月、かつて3人いた常勤外科医が1人となり、昨年10月から手術や入院の受け入れを中止していた能登川病院の外科に、常勤外科医が3人いる蒲生病院から週に一度、外科医を派遣する取り組みを始めた。
このほか、両病院のスタッフや事務局の管理者が23のチームを結成し、医師確保や病診連携の推進などに取り組み始めた。
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市内には、国立病院機構滋賀病院もあるが、医師数は従来の半数未満。同病院を含む3病院は地域医療の柱として欠かせない。新市長には、医療施設の維持を含め暮らしを守る役目がある。候補者らがどのような政策を訴え、市民がどう判断するか、注目される。【斎藤和夫】
毎日新聞 2009年2月7日 地方版