県は二〇〇九年度、自殺予防や自死遺族支援を強化するため、「かながわ自殺予防情報センター(仮称)」を県精神保健福祉センター(横浜市港南区)内に開設する方針を決めた。各地域が実情に合った自殺防止策に独自に取り組めるよう、市町村や医療機関、民間団体などの連携をサポートする拠点とする。地域別に自殺原因の分析から相談体制の整備、情報発信、人材育成、予防対策まで一貫して行える態勢作りを目指す。〇九年度当初予算案に二百十万円の整備費を計上。自殺対策への国の補助制度も活用する。
国内の自殺者数は一九九八年以降、三万人を超えており、国は二〇〇六年、中高年男性の自殺者の急増や、病気や介護疲れによる高齢者自殺、若者のインターネット自殺などの問題を受け、自殺対策基本法を施行。自殺を防ぐ地域ネットワーク作りなどの重要性を打ち出してきたが、関係者などから地域レベルで自殺対策に携わる人材の不足や、関係機関の連携の難しさなどが指摘されている。
県内でも、都市部では、働き盛りの男性や若い女性の自殺者が多いのに対し、県外から訪れた人の自殺が多い地域もあるなど、必要な対策が異なるという。
自殺予防情報センターには、自殺予防のベテラン職員らをコーディネーターとして配置。自殺現場を扱う県警と情報交換しながら「都心への通勤者と、地域内で生活する人で自殺に至る経緯がどう違うか」など、より細かく現状把握に努める。
センターは各地域の状況を見極めた上で、各種相談機関の担当者や企業の管理職らを対象として、自殺問題に携わる人材育成研修を実施したり、医療機関や学校、行政、民間団体などと地域が必要とするネットワーク整備を進める。同様のセンター開設を検討している横浜、川崎両市とも連携する。
自治体の自殺対策の調査や評価などを行っている特定非営利活動法人(NPO法人)「自殺対策支援センター ライフリンク」の清水康之代表は「自殺対策では、医者や弁護士、企業、教育現場、自治体などの連携が不可欠だが、現状ではうまく機能していない。新しいセンターが、つなぎ役になることに期待したい」と話している。
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