毎日新聞の元旦のトップ記事は三菱UFJのモルガン救済の舞台裏レポートだった。記事のタイトルは「アメリカよ・新ニッポン論〜同盟と自立」というものだが、レポートを読むとアメリカによる日本金融「支配と従属」の事実が伺える。
記事によるとサブプライム破綻後、米国財務省は「マネーロンダリング対策でアメリカ以外の銀行は遅れている」と圧力を強め、「米銀に出資したら業務改善命令は解除するよ」と恫喝していたのだ。これをアメリカによる金融支配といわずしてなんといおう。
>先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が終わった昨年10月10日夜から13日朝にかけての実質3日間、世界金融システムを支えるため、米政府は日本政府とも連携し、邦銀からの巨額出資取り付けへ遮二無二動いた。だが、その前から米政府や米連邦準備制度理事会(FRB)は、外国資本から米系金融機関への出資を促すため、したたかに動いている。
>「モルガン・スタンレーへの出資があるので、米当局が当行への処分を解除する」東京の三菱UFJフィナンシャル・グループ本店に、米国から極秘情報がもたらされたのは、9月23日だった。同月、三菱UFJ米州本部の検査に入っていたFRBが、翌週中に現地法人の処分を解除する準備をしていると伝えてきたのが根拠だったという。検査は2週間で終わった。
>01年の米同時多発テロの後、米国はマネーロンダリング(資金洗浄)の監視を強化。防止体制が不十分だった内外の金融機関に「リットン・アグリーメント」(業務改善命令の一種)を出した。三菱UFJ現地法人は06年に処分を受け、翌春を目指していた米金融持ち株会社設立計画が崩れた。この資格がなければ投資業務などが自由にできず、事業が展開しにくい。傘下の現地銀行も04、07年の2度処分されていた。
>「米系金融機関に投資すれば、業務改善命令を解除する」ウォール街で07年から、うわさが流れた。日本の大手金融機関幹部は、同年来日した米財務省幹部から「米系金融機関への出資と処分解除はセットだ」と示唆されたと証言する。
>「モルガン出資=処分解除」の情報に先立ち、モルガンは株価急落で経営危機に陥っていた。9月19日、三菱UFJ、邦銀大手みずほフィナンシャルグループ、中国政府系ファンド中国投資有限責任公司に、一斉に提携の話が持ち込まれた。いずれも不調に終わったが、モルガンは三菱UFJに的を絞って21日、再度出資を要請。投資銀行業務を強化するため「モルガンには長年あこがれを抱いていた」(同行幹部)三菱UFJは翌日、最大90億ドルの出資方針を決める。米投資銀ナンバー2の巨大金融機関の資産査定を、わずか2日で済ませた。
>しかし、モルガンの株価は下がり続け、10日には米政府が公的資金投入の方針を発表した。米政府の投入方法次第で、民間からの出資は価値が下がる恐れがあった。FRBとの呼吸合わせは、証拠のない「裏の事情」。三菱UFJは「降りるに降りられない」境遇に置かれた。
>10日夜から11日未明、三菱側はワシントンで日本政府高官と接触。日本側が米側と情報交換を重ねた。交渉の大詰めで、ポールソン米財務長官が永易克典・三菱東京UFJ銀行頭取に掛けた異例の電話が、「謝意」や「激励」に形を借りた「催促」とも受け取れたのは、こうした経緯があったからだ。
毎日は「督促」といっているがこれは「恫喝」というべきだろう。本来国内に貸し出すべき資金をむしろ国内では貸し剥がし、アメリカに貢いでいるのだ。しかも日本政府もそれを後押ししているのである。毎日には「対米自立」を標榜しながらも強く主張できない経営事情があるのだろう。ならばネットが世論を引っ張っていくしかない。時代の分岐点におけるマスコミの逡巡と限界が垣間見えた元旦の記事であった。
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