新型インフル流行したら、誰を先に助ける?
「新型インフルエンザのパンデミック(大流行)時に、パニックになったら誰を先に助けるか」「ワクチンや人工呼吸器が足りない場合、医師と政策決定者(政治家など)のどちらに優先的に与えるべきか」「予防ワクチンは小児と高齢者のどちらに先に接種すべきか」―。政府は、新型インフル用のプレパンデミックワクチンの備蓄は「今年度中に3000万人分が目標」としており、とても十分と言える量ではない。さらに、実際にパンデミックになった場合、ワクチン、薬、人工呼吸器などいろいろなものが不足すると予想されている。これをどんな順番で振り分けるか。優先順位を決めておかなければ、現場は大混乱に陥る恐れがある。北里大の和田耕治さん(公衆衛生学)は、「倫理的な観点からも、誰を先に助けるかという順位を決めるのは非常に難しい。しかし、パンデミック時に混乱してから議論を始めても遅い」と指摘し、早急に議論を始める必要性を訴えている。
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政府が昨年9月に出したワクチン接種の第一次案では、感染の拡大防止や健康被害の最小化、社会・経済機能の破綻(はたん)防止に携わる人に優先的に接種する考え方を示した。検討を進める際には、▽対象者の選定や順位の考え方をできる限り明らかにする▽議論の透明性を確保する▽多様な関係者、関係機関を巻き込んだ国民的な議論を行う―などに配慮しながら、(1)新型インフル発生前にプレパンデミックワクチンを接種する人(2)発生後にプレパンデミックワクチンを接種する人の範囲と進め方(3)パンデミックワクチンを接種する人―の3点を決める必要があるとしている。今後、同案を基に国民的議論を経て決定するとしているが、国民を巻き込んだ具体的な議論はまだ始まっていない。
2月3日に東京都内で開かれた「新型インフルエンザ患者会ミーティング」(主催=「感染症情報国民コールセンター設置と実施に関する研究」研究班)では、プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチン接種の優先順位について意見交換があった。
厚生労働省健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室の石川晴巳さんによると、海外で新型インフルが発生し、他国の協力によってウイルスがすぐに入手できた場合でも、ワクチンができるまでに最低半年はかかる。そこから、全国民のワクチンを製造するまでに1年。さらに、全国に行き渡るまでに半年かかるという。石川さんは、「国内で最初にワクチンを打った人から最後に打つ人までのタイムラグが、1年になる可能性もある」と指摘した。
既存の鳥インフルウイルス(H5N1型)からプレパンデミックワクチンも製造されているが、有効性が確実なものではなく、まだ量も十分とは言えない。
ミーティングでは、「小児と高齢者で、かつ腎臓病やぜんそくなどを抱えている人は、健康な成人よりもインフルが死につながる確率が高い。そういう人も優先すべきではないか」「地域間格差をなくしてほしい」「国内に滞在している外国人のことも考えなくてはいけない」「病院に行くことができない人のための、ファクスやメールでの対応も考えてほしい」などの声が上がった。
同推進室の高山義浩さんは、「最重視するのは『社会の安定』なのか、『死亡率を抑えること』か。どちらを重視するかによっても優先順位は異なる。この点についても、きちんと議論して決めておかなくてはならない」と述べた。
和田さんは「結論に至らなかったとしても、倫理的な側面を議論する、みんなで考えるというプロセスが重要だ」として、国民的議論を始めるよう呼び掛けている。
更新:2009/02/06 22:47 キャリアブレイン
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