(2-1)過剰労働、辞めていく人を辞めさせない仕組みが必要
36時間労働が常態化しており、過剰労働による燃え尽きが懸念される。また、増え続ける女性医師、厚労省の調査では医師の女性の割合は1994年に12.5パーセント(約2万7700人)だったが、2004年に16.4パーセント(約4万2000人)に増えた。しかし、現行の勤務体系は男性医師を想定して作られており、女性医師が出産・育児しながら働くことは想定されていない。女性医師がライフサイクルに合わせて就労できるような労働環境の構築が必要である。つまり、医療業界における女性の割合を悲観するのではなく、女医の結婚、出産、育児というごく人間として当たり前の生き方を是認する労働環境を整備することが先決であり、それは、男性医師の労働環境の是正にもつながる方策であると考える。
医療機関の運営は労働基準法に則った形にしなければならない。「現在の医療制度は勤務医の積極的な奉仕によって支えられてきた」「若い時、寝る時間があるなら現場に立て、勉強しろと指導された」といった明治時代の徒弟制度さながらの慣行が今でも根強く力を持っている一面がある。
(2-2)解決の糸口として −ナイトシフト制の導入―
36時間勤務が常態化している病院は数多いが、藤沢市民病院のこども診療センターでは、ナイトシフト制を採用している。これは常勤の小児科医14人が夜の当直業務のみを担当するシフト体制である。
36時間勤務体制では、日中の通常業務(午前8時〜午後6時頃。病院によって異なる)を終えたあと当直業務(午後6時〜翌朝午前8時)に入り、翌朝まで働き、そのまま続けて翌日の日中業務(午前8時〜午後6時頃。多くはそのあと残業があり、帰宅は午後8時過ぎ)に入る。
藤沢市民病院こども診療センターでは、この当直業務帯のみを担当するシフト制を採用、ナイトシフトにあたった医師は夕方に出勤し、当直業務を終えた翌朝、日中業務に入らず帰宅する。こうした医師の夜勤体制を採用したのは藤沢市民病院が全国初だという。常勤の小児科医14人という、非常に恵まれた体制であるからこそできるナイトシフト制であり、どこの病院でも導入できるものではないが、そうした勤務体制の病院でならぜひ働きたい、という医師は多いだろう。